新・エヴァンゲリオン解説:第五回 空白の14年間とサードインパクトについて

ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破からQの間の14年間に何があったのか、まとめてみました。やはり破のラストに入っている予告編が重要なキーポイントです。

<おさらい>

  • 新劇場版の世界は旧劇場版のシンジの願いによって再構築された世界と考えます。
  • 序や破で全裸のカヲル君がいた月は旧劇場版の世界です。
  • 新劇場版でアダムスや疑似シン化したエヴァの頭上に生じる同心円状の構造は「バラルの門」です。
  • バラルの門が旧劇場版の世界と新劇場版の世界をつなぐゲートです。
  • ゼーレのモノリスは旧劇場版の世界にいて、新劇場版の世界に干渉してきます。この干渉のために必要なのが、神と魂を繋ぐネブカドネザルの鍵と考えられます。「神と魂を繋ぐ」ということは、ゼーレの魂が新劇場版の世界に干渉するために、鍵と神様(アダム・リリス)が必要ということで、おそらく契約の主である新劇場版のリリスを経由して干渉しています。なお、ゼーレのモノリスエヴァQでなぜか新劇場版のネルフ内に存在していますが、これについては後述します。
  • 新劇場版でゼーレが言ってる人類補完計画【旧劇場版のシンジにより中途半端に再構築された新劇場版の世界は補完すべき対象なので、インパクトでインフィニティ化させてバラルの門を通過させ、ガフの部屋(旧劇場版の世界)に導いて魂を浄化したい】みたいなものだと思います。地球まるごと補完するのが目的のようで、地球全体がコア化して赤くなっていきます。

それでは、14年間に起きたことを解説を開始します。まずはエヴァ破のラスト前の展開から。

  • シンジが疑似シン化(第一形態)したエヴァを用いて、使徒のコアから綾波をサルベージします。このとき、コアが綾波の姿に変化してそのまま初号機と融合します(新劇場版のコアは一貫して赤色です)。初号機は使徒のコアと融合してした結果、コアが2つになります。旧エヴァ的に考えると知恵の実と生命の実を取り込んだ形になりますので、疑似シン化第二形態になり翼が生えてバラルの門が開きます。この段階ではまだサードインパクトは始まっていませんし、初号機はバラルの門を開いただけ、つまりトリガー(きっかけ)として働いただけです。
  • エヴァンゲリオンMark.06登場
    Mark.06に搭乗したカヲルが、このバラルの門の上(旧劇場版の世界)からカシウスの槍を投擲します。初号機はバラルの門を通過してきた槍に貫かれて機能停止し、サードインパクトは未然に防がれました。これがニアサードインパクトと呼ばれるものです。Mark.06もバラルの門を通過してシンジのいる地球へやってきました。渚カヲルは今度こそシンジ君を幸せにできるのか!?(ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破、終了)

空白の14年間(破最後に流れた予告編の内容)について

  • レイとシンジを取り込んだまま凍結される初号機
    サードインパクトを起こしかけたのですから凍結は当然です。初号機はカシウスの槍で貫かれた状態で封印されていたのですが、ほどなくしてカシウスの槍を使わなければならない事態(第12使徒によるサードインパクト)がやってきたので、槍を抜かれます。その後、初号機は宇宙に上げられて飼い殺しになります。
  • 廃棄される要塞都市、幽閉されるネルフ関係者
    第3新東京市もめちゃくちゃなので破棄されました。ネルフ関係者はヴィレの前身の組織が絡んだ国連関係の組織に幽閉されたと思われます。エヴァ2号機はもともとユーロネルフのものですから、ユーロネルフに戻されたと思われます。ユーロネルフはヴィレと関係がありそうですね。またこの段階でネルフに残ったのは、おそらくカヲル、マリ、ゲンドウ、冬月です。
  • 胎動するエヴァ8号機とそのパイロット
    8号機を作ったのはゼーレと思われますが詳細は不明です。旧劇場版の世界で作るとするとアダムスの器になりそうですが、そういうわけではなさそう。パイロットはもちろんマリですね。
  • ゼーレの子供たち(Children)が会議中。立入禁止。
    4人の影が見えているのですが、このうち2人はマリとカヲルで確定でしょう。またChildren チルドレンは旧作の用語なので、マリとカヲルは旧劇場版の世界と関係のある存在ということが極めて強く示唆されます。マリが真相を知っていそうなのはゼーレと関わりがあるからで、旧劇場版の世界も知っていると思われます。また、その後に「マリとXXXXXXが会談」というテロップが入りますが、Qの終盤の状況を見るにマリはカヲルのことをかなりよく知っているので、カヲルが相手だと考えられます。
  • 何も情報がない第11の使徒はいろいろな説が思いつきますが、ひとまずエヴァMark.06、8号機(マリ)によって殲滅されたと考えることにします
  • ドグマへと投下される6号機
    リリス接触した第12の使徒によって起きたサードインパクトをコントロールするために投下されたと考えるのが自然です。第12使徒綾波のクローンを用いた自律型(つまりダミーシステム使用)Mark.06に侵食・融合してしまい、最終的にMark.06がリリスもろとも槍を刺してサードインパクトを停止したと考えられます。綾波のクローンを使っているので、Qのリリス綾波そっくりになります(Qで冬月が明らかにした情報により、新劇場版の綾波リリスから生まれたものではなく、純粋にユイのクローンと考えられる)。ちなみにこのときに使った槍はロンギヌス+カシウス(カヲル君由来)のセットだと思われます。カシウスの槍は後にロンギヌスの槍に変化してしまいます。槍が変形自在なのは旧劇場版でも明らかです。
  • サードインパクトは終盤で止まってしまったので、行き場をなくしたインフィニティのなり損ないが大量に発生しました。どこに行くつもりだったのかって?バラルの門を通ってガフの部屋(旧劇の世界)に行くに決まってるじゃないですか。
  • ゲンドウと冬月はどこか寒そうな地域に行ってますが、おそらくヴンダーとMark.09を得たと思われます。Mark.09はヴンダーの主なので、この2つはセットです。ヴンダーを作っていたのは、マリのいた北極のベタニアベースもしくはその付近と思われます。AAAヴンダーは、3Aヴンダー=バラバラにした第3の使徒の部品をもとに作ったものです。よってヴンダーは一種のエヴァということになります。
  • Mark.06や09の件もそうですが、ゼーレは旧劇場版の量産機や使徒からエヴァを作っているので、8号機も使徒から作っている可能性が高いです。となると、使われた使徒は第11の使徒ということになります。
  • ゲンドウは何らかの方法でゼーレのモノリスの実体を旧劇世界から新劇場版の世界に持ってきます。なぜ持ってきたのかというと、契約の主(新劇場版の世界のリリス)が停止状態になったことで旧世界のゼーレと意志疎通ができなくなったためです。さらに、ゼーレから情報を引き出した上で用済みになったら抹殺したかったのでしょう。
  • その後、ヴィレがブンダーとエヴァ8号機を横取りしました。これはゲンドウ君&マリの計画通りだと思います。

新劇場版:Qの補足

  • 「諦観された神殺し」の神について
    再構築された新劇場版の世界で神と呼べるものはアダムスとリリスだけです。エヴァQで覚醒したエヴァ第13号機が擬似シン化状態を超える形態にまで移行しましたが、それでも神と等しい存在にはなっていないと考えられます。
    そんなわけで「諦観された神殺し」というセリフに出てくる神はアダムスでもリリスでもなく【ゼーレにとって中途半端な新劇場版の世界】を創造した神様と考えられます。それは旧劇場版の世界にいるはずです。旧劇場版の世界に行くにはバラルの門を通らなければなりません。おそらくリリンがリリンの状態のままバラルの門を通るための仕組みがMark.09とヴンダーなので、ヴンダーは神殺しの船と呼ばれます。
    この神様が何者なのかが問題です。単純に旧劇場版のシンジのことだとは考えられない事情があります。月にいた全裸カヲル君のセリフ(また三番目とは~会えるのが楽しみだ)から、旧劇場版の世界にはシンジはすでに実体として存在しないことが示唆されるからです。さらにQにおけるカヲルの「魂が消えても、願いと呪いはこの世界に残る。意志は情報として世界を伝い、変えていく。いつか自分自身のことも書き換えていくんだ」というセリフより、新劇場版のシンジは、旧劇場版のシンジが、シンジ自身により書き換えられた存在と考えられます。書き換えられたのはシンジだけでなく他の登場人物も同様で、それゆえ名前が微妙に違ったりします。
  • その上で言いたいのは、アダム、アダムスとリリス以外で旧劇場版・新劇場版のなかで神と呼べる存在になったものは、旧劇場版の初号機だけという事実です。新劇場版でバラルの門を開いたエヴァはすべて疑似シン化形態です。よって、殺されるべき神は旧劇場版の初号機と考えられます。すべての原因ともいえる旧劇場版の碇ユイが取り込まれたあの初号機です。殺したいと思う人、大勢いそうですね。とりわけ、旧劇場版でユイに出し抜かれる形になったゼーレにとっては殺したくてたまらない神様といえます。
  • ゼーレについて
    モノリスを旧劇場版の世界から持ってきたと考えると「あなた方の魂をあるべき場所へかえす」というゲンドウのセリフの意味がわかります。神殺しはゲンドウがやってくれるというし、自分の魂はバラルの門を通って旧劇場版の世界に帰れるのですから、ゼーレにとってはありがたい話です。
  • ゲンドウ、ユイ(新劇場版)、冬月について
    この3人はゼーレの計画を知っていて、ある意味では共謀していると考えられます。ゲンドウの目的が【ユイに会いたい】だとしても、新劇場版の世界がゲンドウにとって理不尽なもの(破の宇宙空間におけるゲンドウのセリフから推測)という解釈はゼーレの見解と一致します。ユイの目的は、相変わらずこの世界を見守ることでしょう。さらに、シンジ(というか人間)の未来は自分で決めるものという信念は旧作と変わらないと思うので、シンジ自身に理不尽な物語の決着をつけさせるよう導くのではないかと思われます。そしてゲンドウも本心ではそれを望んでいると思っていて、シン・エヴァでそういうシーンが描かれたらいいなあと思っております。
  • 再び、ゼーレについて
    つまりゲンドウも新劇場版の世界をリセットしたいと思っていて、それゆえ神殺しと人類補完計画を遂行してくれるだろうとゼーレは見込んでいます。もちろん、ゲンドウは神殺しをしたあとでユイと一緒に自分が新たな神になるつもりです。ゼーレもそれはわかっていますが、ゲンドウ個人の問題は人類の補完という大目標の中では些細な誤差にすぎないので、「全てこれで良い」と納得して成仏したと考えられます。
  • マリの目的
    マリの目的は「神殺しをさせない=旧劇場版の碇ユイを殺させず、とにかく現状維持」だと考えられます。また、ユイの忘れ形見であるシンジを大切に思うのは当然ですね。