公開日に見てきました。
以下ネタバレありで感想というか私見を書きます。
本作は福井晴敏さんがヤマトに関わり始めて3作目となります。ただヤマト2205新たなる旅立ちとニコイチの企画ということなので実質2作目という話もあります。ニコイチ企画ということを考慮すると、旧作では独立エピソードだった「新たなる」が、リメイクヤマトシリーズでは大きなターニングポイントになります。このあたりのシリーズを俯瞰した視点とともに書いていきます。
1.「ヤマトよ永遠に~ヤマトIII」を再構築する
ヤマトよ永遠に REBEL3199(以下、ヤマト3199と書きます)は、福井晴敏による「ヤマトよ永遠に」~「宇宙戦艦ヤマトIII」の再構築かつ再定義であることを確信しました。なぜそんなことをするのかというと、福井さんが初めてリアルタイムでヤマトを体験したのが他ならぬ「ヤマトよ永遠」にであり、さらに彼がシリーズで一番好きな作品だからです。そして、ヤマトシリーズが変な方向に転換したのも「ヤマトよ永遠に」だからです。
2.オリジナルの「ヤマトよ永遠に」および「ヤマトIII」について
まずオリジナルの「ヤマトよ永遠に」の基本的な設定や流れを押さえておきたいと思います。これがヤマト3199第一章の重要な再構築ポイントになるからです。
- 正体不明のエイリアン(暗黒星団帝国)が突然地球に侵攻します。
- 組織的あるいは散発的な抵抗も虚しく、地球は瞬く間に制圧されれます。
これらのことから暗黒星団帝国側には綿密な計画性が伺えます。しかしその件に関しては劇中では一切説明されません。計画性に関しては地球側も同様で、無人艦隊をあらかじめ配備しておくなど平時としては過剰ともいえる防衛体制が敷かれていますが、その背景は一切説明されません。 - 暗黒星団帝国はヤマトの所在を徹底的に調べます。まるでヤマトの存在を怖がっているようにすら見えます。
ヤマトファン的には、ヤマトは強いから怖がられてるんだろうと思いがちですが、旧作では直前のエピソードにあたる「新たなる旅立ち」においてガミラスもヤマトもゴルバの装甲にダメージを与えることもできず一方的にやられています。つまり地球侵攻開始時点において、暗黒星団帝国がヤマトを恐れる要因は一切ないにも関わらず、ヤマトに対して異常な執着を見せます。これについての説明も一切ありません。 - しかし反攻したヤマトによって中間基地が破壊され、複数のゴルバでも敵わないという事態が明らかになって暗黒星団帝国はヤマトが母星にまで到達することを予見し対策を取ります。
そしてニセの美術品やヤマト撃沈MAD動画といった陳腐な偽装から、母星すべてを地球に偽装するという大規模な目眩ましを用意し、なんとかして時間稼ぎをしようとします。これだけの対策を短時間でやってのけるのは異常です。(たとえば時間断層でもない限りは不可能でしょう) - 重核子爆弾について
スカルダートいわく「聞き分けのない一部の人間に対する脅しにすぎない」。ということは、暗黒星団帝国の言い分(もちろん欺瞞です)を聞き入れていた人間もいた可能性があります。しかしこれに関しても何の説明もありません。
以上のごとく肝心な設定は何も説明されないまま、ヤマトが暗黒星団帝国を完膚なきまでに叩き潰して終わります。オリジナルの「ヤマトよ永遠に」はあまりにもご都合主義的な作品だったと言えるでしょう。もちろん想像の余地があるという評価もできます。しかし自分はいまでも「ヤマトよ永遠に」は、単にヤマトを救世主的な英雄扱いするための舞台装置としてストーリーや設定が安易に作られるような体質に変えてしまった、悪しきターニングポイントであると認識しています。
そうなった背景として、オリジナルの前2作(「宇宙戦艦ヤマト2」と「新たなる旅立ち」)において、ヤマトが最終的には負けたことが影響していることは明らかです。ガミラス戦争においてたった一隻で地球を救ったヤマトが、続編においてはテレサ、スターシャという女性の献身によって救われる立場になってしまいました。エンタメとしてカタルシスのあるストーリーにするためには、やはりヤマトが救世主でなければならない。その結果として作られたのが「ヤマトよ永遠に」ということは今となっては容易に想像ができます。
ついで「宇宙戦艦ヤマトIII」の件になります。
「ヤマトよ永遠に」でもサーシャの犠牲があった上に、やはりあまりにもご都合主義であるという批判は当然ありました。そこで原点回帰ということで「宇宙戦艦ヤマトIII」が企画されます。ヤマトIIIの特徴として、下記の事が挙げられます。
- ガルマン・ガミラスとボラー連邦の2大勢力の狭間で翻弄される地球
当時の世界情勢、つまり東西冷戦に巻き込まれた日本の立場が容易に想像される状況です。 - ガルマン・ガミラスが抱える問題の掘り下げ
急激な版図拡大政策のため情報共有や命令・指示の徹底がなされない状況が描かれるなど、政治的な描写も重視してご都合主義からの脱却を図っていることがわかりました。 - 新キャラによるテコ入れ
古代と雪を始めとする第一作から継続しているキャラクターの成長を描くのは難しいので、土門、揚羽という2人の若い新キャラを軸に第一作で見られた若者の成長ストーリーを描くという意図です。 - 地球滅亡の危機
これは第一作と同じ舞台装置です。(ただ必然性に乏しい上に科学的な整合性がまったく取れないひどい設定だと感じました)
当初は全52話、丸1年かけての放映ということでエピソードをじっくりと掘り下げた演出が多かったです(ただし進行が遅いという弊害もあった)。ところが途中で放映話数を半分に減らされ、短期間でストーリーを完結させるため極めて強引な展開になります。その結果、終盤は急に駆け足状態になって最後はボラー連邦が一方的に壊滅して終わりました。その内容の歪さに関しては当時の声優さんたちも苦言を呈するほどで、ヤマトシリーズの中でも惨憺たる様相を呈した一作ともいえます。しかし今となっては欠番を生じさせず終わらせたこと自体が奇跡ではないかと感じます。
3.福井さんの再構築について
福井さんは「新たなる旅立ち」から始まるシリーズをそのまま作り直したら、リメイクヤマトシリーズもオリジナルのヤマトシリーズと同じ運命を辿る可能性が高いと考えたと思います。リメイクヤマトシリーズはおそらく完結編に相当するエピソードまで計画されていると思われ、そこでは沖田艦長も復活するはずです。リメイクシリーズではすでに沖田艦長の復活に関しても理屈付けができるようになっていますが、どんなに理屈をこねても沖田艦長復活はご都合主義的なのは否めません。そもそもヤマト2202でも時間断層や終盤の展開などには相当に無理がありました。なので、福井さんは新たなる旅立ち~ヤマトよ永遠に~ヤマトIII相当のエピソードをリメイクするにあたり、完結編を見据えた上で3作を一貫するナラティブを用意ことでストーリー展開に整合性と説得力を持たせようと考えたと思われます。
そこで原作(旧作)のご都合主義な設定や展開に対して可能な限り意味のある都合を用意し、ヤマト2205~3199を企画したと思われます。このあたりは、宇宙戦艦ヤマト第一作において整合性が取れていなかった描写や演出に対して、意味のある設定を与えることで一貫性を整えたヤマト2199とよく似ています。
REBELというのは反抗という意味があるそうですが、福井さん的には旧作のご都合主義に対する反抗ではないかと思います。ヤマト2205~3199第一章を見る限り、旧作の映像表現やその演出意図は肯定した上で、制作の進め方や根拠のない設定については批判的な立場を貫いているように感じました。
4.ヤマト2205新たなる旅立ち~ヤマト3199第一章で明確に意味づけされたもの
(1)デザリアムの侵攻が極めて用意周到な計画に基づくことを匂わせる
(2)デザリアムの言い分に対して「聞き分けのある人」の存在
(3)デザリアム侵攻を予見した「オペレーションDAD」
(4)旧ヤマト関係者をオペレーションDADの対象者にした理由
まずヤマト2205新たなる旅立ちにおいて、デザリアムが明確にある意図をもってイスカンダルを鹵獲しようとしたことが示され、さらにはデザリアムが未来の地球であるかのような情報も示されました。もちろん、この情報がブラフである可能性は否定できません。(2)~(4)はヤマト3199第一章で示され、オリジナルの「ヤマトよ永遠に」ではまったく触れられなかった裏事情が確かに存在することとして表現されました。
とりわけ(4)については「イスカンダル事変で命令違反した連中を閑職に回す」とも見られる体裁を取ることで整合性をもたらしたのが印象的です。この結果、親デザリアム勢力と分断し、オペレーションDADを遂行しやすくしたと考えられます。といってもオペレーションDADも親デザリアム派には漏れていたわけで、双方にスパイがいることが伺えます。南部は大っぴらにスパイしていましたが、あれも第三者がもたらした情報に基づいてやっていると思われます。父親の執務室に乗り込んでやっていたのは、すでに切羽詰まった状況になっていることもわかっていたからです。この情報提供者が誰なのか非常に気になるところではありますが、おそらく星那の関係者ではないかと推測します。藤堂さんたちがオペレーションDADの対象者に事前連絡をしなかったのもスパイ対策と思われます。以前のヤマト乗組員たちをオペレーションDADの中核とした理由も、おいおい説明がなされると思います。