作曲家と聴衆のテンポ感についての巻

ハネケン並のダジャレ帝王いけべえが「オーケストラがやってきた!」(違)で語っていたテンポ感の話が面白かったです。作曲家はピアノで作曲して、ピアノで弾いた感覚でテンポを設定するけれど、いざオーケストラで鳴らすと必ず「速すぎた!」と思う、という話。
岩城宏之さんの著書に、武満氏本人を招いて彼の新作をリハーサルしてるときに、武満が「もうちょっと遅く」を連発したという話が載っています。岩城はこの件に関して、おかしな解釈をしてたんです。詳細は忘れましたがw「変なことをいうなあ」という印象は残ってます。自分としては「武満もいい年だからテンポ感が遅いんだろ」くらいに思ってました。しかし、いけべえが生々しい話をしてくれたので、なるほどガッテン!となったわけです。
ブラームスがピアノ協奏曲第2番のテンポ指示を遅く改訂した理由も、これでわかりました。初演でピアノを担当した作曲者本人が弾ききれなかったからだ!とあちこちに書きまくってごめんなさいw
以降、聴衆には楽曲のテンポ感があって、無意識のうちにそれに縛られるよ、という話に勝手に展開します。

モーツァルト後期交響曲メヌエットのテンポ設定は、異常に速いです。当時の聴衆はびっくりしたことでしょう。でも、いまの聴衆は慣れているので、驚きがありません。当時の聴衆が感じた驚きを、現代の聴衆に与えるにはどうしたらいいか。それに対する1つの答えが、ニコラウス・アーノンクール指揮の演奏です。
わたしはびっくりしました。まさに驚愕です。とても新鮮な驚きでした。当時の人も、同じような驚きを覚えたんだろうな、と思います。これがアーノンクールの目指した、聴衆の感覚の再現です。彼は決して「当時の演奏の再現」を目指しているわけではないのですが、勘違いしている人が多いようなのでここに記しておきます。