iZotope Ozone 8 Advance/neutron 2 Advance セットを購入したの巻

AIが自動的に最適化してくれるツールということで各所で話題になっているマスタリング&ミックス時のレベルコントロールプラグインソフトです。

自分はマスタリングツールではあまりアクティブな使い方は考えていなくて、2chミックスの整音と、ある程度のマキシマイズができればいいくらいの感じです。それだけのために使うには高いような気もしますが、何も考えなくてもいいし、あっというまに作業が終わるので、時短ツールという認識です。

とりあえずマスタリング用のOzoneから使ってみていますけど、自動でパラメータを設定してくれてマキシマイズできるのでとにかくラクです。また意図的にいびつなミックスをしたソースを投入すると、むりやり平準化しようとするのが面白い。たとえばベースが強調されすぎたミックスに対しては、ベースの音量変化に合わせてイコライザーが動的に作用して*1、強制的にバランスのよいサウンドにしてしまいます。でもイコライザーを手動でスルーさせてやれば、その部分は解除されます。このあたりの操作がわかりやすくて、ほとんどマニュアル要らずです。

neutronはミックスダウン時に各チャンネルに対してレベルを自動最適化してくれるツールで、いまやっているバルディオスの「思い出ブルー・ドリーム」のミックスで使う予定です。これでちょっとは玄人っぽいサウンドになればいいなあと淡い期待を抱いております。

*1:アクティブ・イコライザー

【音楽用語シリーズ】デクレシェンドとディミヌエンドの違いについての巻

ネットを検索すれば音楽用語の意味がわかる便利な時代ですが、微妙なことになると回答にたどり着きにくく、また外国語の訳としてそれは本当に正しいのか?と首を傾げたくなるような解説もあります。そんなわけで、ちまたの音楽用語における重箱の隅をつついていきたいと思います。
今回はdecrescendo デクレシェンドとdiminuendo ディミヌエンドです。一般的な音楽用語辞典だとどちらも「だんだん小さく」ですが、本当にそれでいいの?というお話です。

 

1.語源

どちらもイタリア語なので、語源を調べます。

(1)デクレシェンド

de+crecendo つまりクレシェンドの反意語です。crescere(増大する)という動詞の名詞系の逆の意味なので、「だんだん小さく」で問題はありません。英語だとincrease ⇔ decreaseという関係で、こちらのほうが増大・減少という対比がわかりやすいと思います。

(2)ディミヌエンド

di+minuere 強調の接頭詞+小さくするという言葉です。minuereはラテン語ではminuoという単語で、ここから minimum つまり最小という派生語が生まれていますので、ディミヌエンドの終点は本来は最小の音量になると思われます。
とはいうものの、単語は時間の経過とともに意味が弱まる(劣化する)傾向があり、300年前と100年前と現在ではニュアンスが違っている可能性が否定出来ないということと、そもそも作曲者がディミヌエンドの本質を理解していない可能性もあるので、「本来は」という言葉を付けています。
なお英語だと diminish です。この単語は消え去るとか衰えるという意味がありますから、decreaseとは全く違うということがおわかりいただけると思います。衰えるという意味に捉えると、音量だけでなくテンポも遅くしたほうがいいという可能性も出てきて、事態は複雑化するのです。

2.ざっくりとした結論

語源を知っていて、なおかつ楽曲中で使い分けているイタリア系の作曲家は当然区別が必要で、楽曲中で片方しか使っていない作曲家(特にドイツ系)は両者の違いを神経質に考慮する必要はないと思われます。ただしドイツ系でもシューベルトのように両者を使い分けている場合は、明確に差を意識する必要があります。シューベルトディミヌエンドリタルダンドの意味も加わります。このあたりは歌曲っぽい指示だと思います。

ということで、ここからは細かい調査報告です。暫時追加するつもりです。

(1)ベートーヴェンピアノソナタ(ヘンレ版)

ベートーヴェンは影響力が大きい人なので、作品数が多いピアノソナタを全部調べてみましたが、熱情が境目になっていました。つまり、熱情まではほぼデクレシェンドを使っていて、熱情から完全にディミヌエンドに切り替えていますので、両者は同じ意味で使っていると考えられます。ただし、30番と31番でデクレシェンド表記が復活しています。これは特定のフレーズの音量を下げるという意味で使っていると思われます。

・初期~15番:デクレシェンドのみ
・16番:第二楽章はディミヌエンド。第三楽章はデクレシェンドが使われる。
・17番(テンペスト):ディミヌエンドが多いもののデクレシェンドも混在していて明確な使い分けがなされていない(同じようなフレーズにdim.とdecresc.の指示があり、適当に書いていることが推測できる)。
・18番:デクレシェンドのみ。19/20番はどちらもない。
・21番(ワルトシュタイン)、22番:デクレシェンドのみ。
・23番(熱情)~29番(ハンマークラヴィーア):ディミヌエンドのみ。
・30番:第三楽章の第二変奏に一箇所だけ短い区間にデクレシェンドが使われているほかはディミヌエンド
・31番:やはり第三楽章の嘆きの歌で短い区間にデクレシェンドが使われているほかはディミヌエンド
・32番:ディミヌエンドのみ。

(2)シューベルト

詳細は調査中ですが、ピアノソナタ20番では両者併用していたはず。

(3)ショパン

エチュードディミヌエンドのみですが、さらに音量を下げたいときに smorz.(スモルツァンド)を使うのが特徴です。またカンタービレな表現を重視する曲ではかなり几帳面にデュナーミクや演奏指示を書いていて、機械的な演奏にならないように腐心している様子が伺えます。

 

※予告:このシリーズ続きます。
モデラート:中くらいの速さってどういうこと?
ドルチェ:イタリア語でドルチェといったら甘いお菓子のことですが音楽用語は?
アクセント:sf、fz、rf の違いについて。諸悪の根源?はやっぱりベートーヴェンだった。

「アフロディアに花束を」の巻

宇宙戦士バルディオスの劇伴で、思い出ブルー・ドリームと一緒にUPしたくて採譜して演奏しました。32小節の短い曲なので3時間くらいでできてしまいました。

この曲は、マイナー系メロディ+4つ打ちコードピアノによる悲愴感に満ちた劇伴シリーズの1つです。以前にイデオンの劇伴から3曲まとめて公開したこの動画と同じアレンジ手法で、羽田健太郎氏が関わった作品で数多く見られます。


伝説巨神イデオン 発動篇BGM 「死」を弾いてみた:楽譜付き

 

演奏で難しかったのはエレキギターのソロです。楽譜で書くとあっさりしてるんですけれども、チョーキングチョーキングビブラートといった技術が使われているので丁寧にコピーしました。

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またINTEGRA-7はシンセモジュールなのにギター系のエフェクトがたいへん充実していて、基本のエレキギター波形からさまざまなサウンドを作れます。いままでエレキギターを使ったことがありませんでしたが、今回ようやくINTEGRA-7のギターアンプシミュレータの実力を感じることができました。たとえば、きちんと弦をミュートしないで2度音程が重なると音色が歪みます。原曲にもそういう箇所があるので、そのへんも含めてコピーしていますw

「思い出ブルー・ドリーム」もほとんど完成しているので、次の週末あたりで公開できればいいなと思います。

思い出ブルー・ドリームの巻

このブログを検索するとイヤというほどヒットする劇場版・宇宙戦士バルディオスの挿入歌でありサントラ未収録のインスト劇伴ですが、ついに(ようやく?)演奏に取り組んでおります。

編成は、バンド+弦楽器+ハープ+グロッケン+ピアノというピアノ入りイージーリスニング系のアンサンブルです。ブルーレイから耳コピしてスコアを作ってしまいました。

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劇中で使われたものは、イントロとラスト(おそらく)でカットされている部分があります。特にイントロの方は不自然なので、ボーカル版を参考に2小節補完してあります。この補完作業、オケはボーカル版からそのまま持ってくればいいのですが、ピアノはボーカル版にはないのでちょっと面倒です。しかしヒントはあります。この補完部のあとの2小節のピアノのフレーズ(アルペジョ和音)はボーカル版ではエレキギターが弾いているフレーズなので、その前の2小節もギターから補完すればいいんです。ということで出来上がったのが上のスコアで、実際に演奏してみても不自然な感じはしませんので成功です。

セリフや効果音の後ろから聞こえてくるので採譜が困難で、結局ピアノとリズム隊以外はボーカル版から耳コピしています。だってテンポ以外は同じなんだもん(笑)

アニメではこの劇伴のあとにピアノソロでも同じ曲が流れますが、そちらも演奏して一緒にUPする予定です。

※調性の件

実はバルディオスはピアノ楽譜集が出ていて、この曲も掲載されていました。それがGマイナーです。ところがこのインスト版はF#マイナーで、ピアノソロ劇伴はFマイナーです。おそらく元はFマイナーで、戸田恵子さんのボーカルに合わせて半音上げたのではないかと思います。

※訂正

ピアノソロ劇伴もF#マイナーのようです。おそらくテープの回転速度を落として尺を稼いだと思われます。

HDMI ARCを使ったデジタル放送音声の外部出力の巻

いままでテレビ代わりに使ってたプロジェクターが壊れたので、観念してテレビを買いました*1。最新のテレビでHDMIで外部機器を勝手に認識してくれるのですが、いろいろ問題がありました。半日くらい試行錯誤してなんとか解決した上に、デジタル放送音声を外部出力できたので備忘録として残しておきます。

  • テレビ:SONY KJ65-9000F
  • AVアンプ:Nu Force AVP-18
  • 機器接続図(GoogleアプリのDraw.ioで描いた。便利)
    ①:映像+音声(音声のみ双方向)
    ②:映像
    ③:音声(デジタル)
    ④:音声(アナログ)
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※ARC:Audio Return Channel 詳しくは下記参照

scs-uda.com

 

1.唯我独尊なテレビ:まずは①②④を接続

ソニー9000FはAVアンプの電源がONになっていると外部オーディオ出力があると判断して、ARCモードに切り替わってテレビ本体のスピーカーが自動的にOFFになります。マニュアルで音声をテレビ側に戻せるんですが、3秒くらいで勝手にARCに切り替わって「ARC対応の3番のHDMI端子を使え」というメッセージが出ます。この動作をストップする方法を検索したのですが情報が見つかりません。
テレビ番組を見るのにわざわざAVアンプを使いたくなかったので、3番以外の端子を使ってみたもののこの現象が止まらず、止め方もわからないので観念してテレビとAVアンプをHDMI ARC端子同士で接続したところ、テレビ音声が④のアナログ音声に出力されました。というわけで、テレビで音声を聞きたかったらAVアンプの電源をOFFにするしかありませんので、ちょっと面倒ですね。
ARCは機器のコントロールも自動で連携するので、先に書いたようにAVアンプONの状態でテレビのスイッチを入れるとテレビからAVアンプをARC受信モードに変更する信号が送信されます。しかもこの状態でレコーダーの再生を始めると、テレビは自動的に外部入力に切り替わります。わざわざテレビ側のリモコンで入力ソースを変更する必要がありません。近年のソニー製AVアンプ+レコーダーだと自動的に切り替わるとテレビのマニュアルに書かれていますが、AVP-18+他社製レコーダー*2でも動作するとは思いませんでした。

2.しかしレコーダー映像&音声が不安定に:③を追加

ARCを使うとテレビとAVアンプが頻繁に通信するようで、それにAVアンプが反応してレコーダー再生の映像や音声が切れるようになってしまいました。特に音声が頻繁に切れるので改善したくなり、たまたま持っていた光ケーブルでレコーダーの音声出力をAVアンプにOptical(光)接続したところ、音も映像も切れなくなりました。副次効果として音質もぐんと向上しました。やはりなんでもかんでもHDMIケーブル1本で済ませないほうがいいようです。

3.今後の展開(特になし)

HDMIケーブル1本でテレビ音声を外部出力できるARCはとても便利ですが、HDMIより光のほうが音質がよいことがわかったので、テレビからも光で音声を出せばいいはずです。しかし、そもそもシンカリオン以外はリアルタイムでテレビ放送を見ないですし、BDレコーダーのチューナーで見れば光出力になるので、現状のままでいいと判断しました。自分が使っているBDレコーダーは3チューナーなので、2番組までなら録画中でもレコーダーのチューナーでテレビ視聴できるんです*3

AVP-18はUIに難があって設定がけっこう難しくいつも悩んでいましたが、今回のゴタゴタでようやく慣れました。また音声独立デジタル入力の音質がいいというレビューを多く見ましたが、それを実際に体感することができました。ネットにも情報が少ない製品で、日本のユーザーも少なさそうですけど、数少ない薄型のAVプリアンプなのでぜひとも後継製品が出てほしいと願います。そもそもAVプリというカテゴリの製品自体が少なくて、ピュアオーディオにも耐えうるレベルの製品が少ないのでメーカーさんには頑張っていただきたいと思います。

*1:東京オリンピックまで待つつもりだった

*2:パナソニック

*3:これも平昌オリンピックの放送を録画するために3チューナーモデルにした

スティーブン・オズボーンのドビュッシー 前奏曲集の巻

前回にひきつづき、ご贔屓ピアニストであるオズボーンさんです。

相変わらず極めて高い完成度の録音です。過度な思い入れを廃した演奏解釈と、それに基づく表現の客観性がこの人の特徴であり、良さであることを改めて思い知らされるCDでした。真摯なスタイルではあるけれども、決して深妙で重苦しい演奏にはなっていないというバランス感覚も良いと思います。

Preludes

Preludes

 

 

「エヴァンゲリオン」ウインドシンフォニーの巻

第一部が旧作(というかTV版)、第二部が新劇場版の楽曲でした。

全体的に原曲を尊重したアレンジでしたが、吹奏楽だとどうしても無理が生じるところもあって、いろいろ厳しいと感じました。打楽器はほとんど原曲どおりに鳴らせるのに、それ以外が手薄になるので違和感があるんです。

中盤にフル編成でなく管楽器五重奏編成のパートがあったんですが、アレンジはほとんど同じなのに、むしろこちらのほうが無理がなく感じました。中途半端になるくらいなら、室内楽編成のほうがいいかもしれません。

ところで、シン・エヴァンゲリオンの情報発表が近いのではないか?と読んでいた件は以前も書きましたが、その予想の最大のヒントになったがこのコンサートです。シンエヴァ関係で何も動きがないのに演奏会だけをやるはずがなく、これは新作公開に向けた一連のイベントだろうと考えたのです。それが2020年になるとは思わなかったんですが、ここから2年後の公開を目指していると思います。