ちょっと高度な打ち込みテクニック(ドヤ顔)の巻

ドヤ顔するほどでもないんですが、SC-88ではできなかった技のご紹介。

  • ベロシティ・スイッチ(厳密にはノートオン・ベロシティ・スイッチ)
  • ノートオフ・ベロシティ
ベロシティ・スイッチ

音色を複数用意して、鍵盤をたたく強弱(ベロシティ)で切り替えるテクニックです。
この機能が音源に用意されていない場合は、ベロシティによって送信チャンネルを分けるしかなく、リアルタイム演奏で実現するのは不可能です。(YAMAHA MEP4などの、MIDIイベント・プロセッサを使えば可能。だが、そんな面倒なことするか普通?)
この機能の発祥となった機種は知りませんが(汗)、ベロシティで演奏表現ができるようになったシンセは、事実上、YAMAHA DX-7が初です。FM音源はベロシティで倍音の出方を制御できるので、豊かな演奏表現が可能です。これをサンプリング系音源で擬似的に再現するのが、ベロシティ・スイッチです。フォルテとピアノの音色を別個に用意するやり方です。この機能はドラムパッドで特に有効で、弱いときはライド、強く叩いたらクラッシュ、みたいなことができます。
高級なデジタルピアノでは、ベロシティに合わせて音色を3〜4段階用意するのは当たり前ですし、各段階がなめらかにつながるように、内部で演算する機種まであります。

ノートオフ・ベロシティ

ポリフォニック・キープレッシャーとともに、ほとんど省りみられることがない、とてもかわいそうなMIDI仕様です。
A-300PROでsoniccellを弾いているうちに、双方がノートオフ・ベロシティに対応していることに気づきました。これをADSRのリリース時間に適用することで、弦楽器の余韻の長さをカンタンに制御できることがわかりました。

上記は皆様おなじみの、ショパンチェロソナタ終楽章の終結部です。なお、赤で囲んだ音は開放弦です。
同時に鳴らせる弦は2つまでなので、ピアノのアルペジョのように弾くしかありません。このとき、弓が弦から離れてしまうのですが、たっぷりと余韻を残すことで、独特なサスティン効果を作り出します。
リリース・ベロシティは通常64あたりで固定されますが、意識的に離鍵速度を遅くすることでベロシティ値を下げ、これに対応した音色パラメータを設定すれば、音の余韻を長くできます。逆に離鍵を速くすれば、スパッと音が止まるようになります。つまり、離鍵速度をコントロールすることで、余韻を自由自在に制御できます。これがツボにはまると、かなり気持ちいいです。チェロやコントラバスなどでは、特に有効な機能だと思います。弦楽器の奏者は、アルコだけでなく、ピチカートでも余韻を制御しながら弾いています。(と思う。スラヴァが「こうやれば余韻の長さが変わりますよ」と、見本を示しながらサイトウ・キネン・オーケストラのメンバーに指導していた。)
チェロは5度調弦なので、下からドソレラが開放弦になります。開放弦は、余韻を長く伸ばすことができます。この音を上手に使うと、つまり基音やドミナントが開放弦となる調性で作曲すると、より豊かな演奏表現が可能になります。バッハの無伴奏チェロ組曲1番はト長調ショパンラフマニノフチェロソナタト短調です。楽器の特性を生かした作曲をしていることが、よくわかりますね。
コントラバスは時代によって調弦が違うので、モーツァルトを演奏する人は調弦を変えたほうがいいと思いますし(鬼のような意見w)、打ち込みもそれを意識したいものですね!(汗)