庵野秀明と氷川竜介のヤマト効果音とミニモーグに対する大いなる愛の巻

このタイトルでピンと来なかった人は読まなくていいです。ヤマトの効果音に関するマニアックな話です。
http://www.amazon.co.jp/dp/B00799I5C0
ヤマト第一作TVブルーレイボックスには、アンノさんと氷川さんと柏原さん(ヤマトの効果音をやってきている人。初代アトムから現在も仕事をなさってるサザエさんまで、アニメ効果音界の生き字引的存在です)の音響対談が入っています。この内容がすごすぎる。アンノさんは常々アニメの効果音の重要性を語っていますが、その原点は、やはりヤマト。
今回の対談ではシンセの話をいっぱいしていて、シンセオタク的にも歓喜です。自分もここ最近は、ヤマトを見返しながら「この音はシンセで作ることができる。けど、2〜3種類混ぜないといけない」「波動エンジンの始動音もLFOがポイント。ドーレドミドファドソドラドみたいに矩形波で半音単位に音程が上がっていく大きなピッチ変化だけでなく、とても細かな揺れも加わっている」・・・などなどシンセ・プログラミングが目まぐるしく頭の中で動いています。
ということで、以下に50分間にわたる音響対談の概要をご紹介。

  • まず自己紹介。「ヤマトファンの庵野秀明です」「同じくヤマトファンの氷川竜介です」なんだそれ(笑)
  • 故・田代敦巳さん(ヤマトの音響監督をなさったかた。ヱクセリヲンやヱルトリウムの艦長としても有名)が当時発売されたばかりのミニモーグを購入して、それを柏原さんが聞きつけて買い取り、ここぞとばかりふんだんに使用した。なお、当時ほかに日本でミニモーグを持っていたのは冨田勲
  • シンセだけだとどうしてもウソっぽいので、生音と混ぜた。
  • 当時は音響テープは3chしかなく、マルチで編集できなかったので、せいぜい2〜3種類の音しか混ぜられなかった。
    ⇒これが逆に音の個性を際立たせた。
  • ガミラス星の効果音は西崎Pが絶賛した(柏原)
    ⇒アンノと氷川が一斉に「ブーンブーンブーン」と例の効果音を口真似しだすwww
  • ヤマトってセリフと絵がズレてるところがいっぱいあるのに、効果音は絶対にズレない。なんで?(アンノ)
    ⇒1話ごと半日かけてフィルムが上がる前に効果音が入る位置を決めていた。それに合わせてフィルムを編集する。だからズレない。そのかわり、声がズレるw
  • 爆発と同時に割れるガラス音⇒「だっていっぱいメーターがついてるもんね!」(一同爆笑)
  • 音は耳で聴いてあわせるべき(柏原)
    それはそのとおりなんですが、ごめんなさいProToolsで波形見ながらやっちゃってます(アンノ平謝り)
  • アニメはストーリーと絵ばかりが注目されるけれども、音楽や効果音が入って、そのすべてが全部よい作品でないと、名作とは言われない。ヤマトは全部がずば抜けて素晴らしかった奇跡の作品。記憶に残る音楽、記憶に残る効果音、これがすごく大事なんです!(アンノ熱弁)
  • 僕もヤマトはいまだにセリフや効果音を覚えている。今回ブルーレイボックスの制作に携わって見直していたんだけど、セリフをことごとく覚えている。だから脳の何割かはヤマトの記憶で占められていることになる(氷川)

ということなんですが、第一作のブルーレイを見なおしてる自分の感想はちょっと違っています。とりあえず、11話(デスラー機雷の回)まで見た感想は以下のとおりです。

  • 音楽が必要ない場面でもお構いなしにBGMが入ってくるのはよくない。ヤマトのBGMはメロディの力がとても強いので、結果として画が音楽に押されてしまう。宮川泰の曲が素晴らしいので、存分に聞かせたかった西崎Pの気持ちはわかるけれども、現代的な感覚からするともっと控えたほうがいい。
  • 曲の使い分けに一貫性がない部分がある。ガミラス本星+デスラー専用のBGM、ヤマト専用のBGMは当然あるが、両方に使ってしまうBGMがいくつかあって、それが雰囲気を壊す。ヤマトは効果音の使い分けが完璧なので(柏原さんがいうには、この点はとても重視したとのこと)、余計に目立ってしまう。
  • なお、ヤマト2199では上記の問題点をしっかりと払しょくしています。わかってますね!
  • 割とどうでもいいエピソード(太陽圏から「さよーならーー!」、アステロイドベルト、デスラー機雷の回)でも展開やセリフをばっちりと覚えていて、自分がいやになりました。中学生のころ、全26話収録のカセットテープセット(!)を買って、擦り切れるまで聞き込んだ結果です。