クリスティアン・ツィメルマン ピアノリサイタル@みなとみらいホール の巻

<曲目>
ショパンマズルカ Op. 24(全4曲)
ブラームス:ピアノ・ソナタ 第2番 Op. 2
ショパンスケルツォ(全4曲)

ショパン4曲ずつでブラームスソナタをサンドイッチにするというプログラムです。ツィメルマンは以前もブラームスを弾いていて、後期の小品集(op.118とか)はものすごい名演なのですが、若い時期の作品であるソナタは堅い演奏になってしまうという状況でした。さて今回は如何に?

マズルカ
ショパンはたくさんマズルカを書いていますが、op.24は自分が一番好きな作品です。これを演奏するということで、今回のリサイタルを聞きに行く気になりました。
ツィメルマンの演奏は最後の4曲目(とても重要な曲)に向かって内的に盛り上げていく解釈で非常に説得力がありました。
物憂げに始まる1曲目は引きずるような三拍子で中間部で少しだけ陽の光が差し込みます。2曲目は一転して快活なオベレクで、これは軽やかなタッチで演奏されました。3曲目は長調の曲ですが遅めのテンポで内省的に弾いていました。この曲は朗々と歌ってもいいと思うんですが、短いのであっさりまとめたようです。
ここまでは連続で演奏して、3曲目が終わったところで間を取ります。さすがツィメルマン、わかってらっしゃる!(笑)
問題の4曲目はじっくりした導入からフレーズを丁寧に紡ぐ演奏でした。長調短調を行き来しつつ、さまざまなリズムが入り乱れる独特の曲想をしっかり把握して、ショパンの望郷の念に対する共感を演奏したと感じました。

ブラームス ピアノソナタ2番
この曲は、きちんと弾けているのにあまり面白くないといういつものパターンに陥る部分がありました。10年以上前に3番を聞いてますが、あれと比べるとだいぶ音楽的に弾けていたと思います。ただ、ショパンと比べると解釈が表面的で、楽曲に対する共感のようなものはあまり感じられず。
3曲あるブラームスピアノソナタは若書きの作品ですし、ベートーヴェンの後期ピアノソナタの手法を真似るなどあまり深い内容でないという話もありますが、2番はシューマンの影響があると思っていて(実はクララ・シューマンに献呈されている)、その部分を虫眼鏡で見るように拡大して表現するといいんじゃないかとか思ったりもしますけど、そういうひねくれた解釈はしませんでした。ただ、ここがツィメルマンの問題だと思っていて、いつも正攻法ではなく、たまには斜めから曲を見てもいいんじゃないかと感じます。

ショパン スケルツォ1~4番
1番は上滑りした状態で始まって後半持ち直し。
2番もぎくしゃくした状態で始まって「わかったから落ち着け」と思いながら聞きました。ここでいったん袖に引っ込みます(休みを入れて正解)
3番でガラッと変わって、ようやくツィメルマンらしい精度の高いタッチと、フレーズの流れや見通しの良さを兼ね備えた演奏になりました。
4番もうねるようなフレージングとコラールの対比が見事でした。

今年も花粉症の巻

毎年おなじみ花粉症の季節です。

※今年のおくすりレシピ
・フルチカゾン点鼻(ジェネリック
・パタノール点眼
・ときどきフェキソフェナジン錠(アレグラのジェネリック

例年と同じだったw

フルチカゾン点鼻は3週間を超えると副作用が辛くなってくるので少しガマンして先週から使用開始しましたが、ちょうど飛散が増える直前でトンピシャのタイミングでした。

点鼻ではstrongステロイド剤のナゾネックスがものすごく効くことがわかってますけど、自分は副作用が強めで鼻血が出たりしやすくなるので自粛。効き目は素晴らしく、ステロイドなのに即効性もあるので症状が重い方は一度お試しください。

宇宙戦艦ヤマト完結編BGM「ユキ」を演奏してUPしましたの巻

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ヤマト2202の森雪っていいなと思ったので弾きました。
最速先行上映会を見終わった後で猛烈にこの曲が弾きたくなって採譜したんですけど、本公開を見たら「大いなる愛」を弾きたくなってしまい、そっちを優先しました。

動画コメントの通り、羽田健太郎氏による「宇宙戦艦ヤマト音楽全集」(楽譜集)付録の模範演奏を耳コピして、少しアレンジしています(最後をメジャーコードにした)。いつも採譜したあとは自分なりに表現をつけて弾いてますが、今回はハネケンの演奏をできるだけ忠実に再現してみました。いつもより左手のタッチが強くて押しが強い演奏になったと思います。

 

 

さらばヤマトを否定するのではなくアンサー作品だった宇宙戦艦ヤマト2202の巻

もしくは、福井晴敏のいい仕事を見させていただいた宇宙戦艦ヤマト2202の巻。ネタバレ全開でいきます。

おそらく福井氏はガンダムイデオンほどにヤマトに思い入れがあるというわけではないのです。なにしろヤマト2202の舞台挨拶でも口を開けばガンダムイデオンですから。でも、それゆえ客観的目線でヤマト2202に対していることが当初より発言の端々から伺えたので、整合性が取れないことはやらないだろうとは思っていました。たしかに序盤は演出がギクシャクしていて緩急も良くなかったのですが、13話もかけて丁寧に波動砲問題を取り扱ってリアリティのある落とし所へ持っていったので、後半も大丈夫だろうとなんとなく思ってました。

さらに、ヤマト2199で謎だったデスラーの行動に対して後追いで理由付けをして、森雪の記憶喪失ネタも改めて焦点を当てて回収しようとするなど、先人に対するリスペクトが半端ないし、ドラマの伏線を丁寧に追っている姿勢が伺えました。

さらにさらに、20話でゴレムというガトランティスに対する決定的な軛(くびき)*1が登場したので、これが発動してガトランティス全滅エンドもしくは桂木サーベラーがズォーダーの精神を浄化させるエンドになるだろうと思っていました。それに22話まで各キャラが全力で生き残る路線を突っ走っていました。
だから、さらばエンドにはならないと思ってたんです。

でも、そうなりませんでした。もっとひどかった。もっとすごかった。
という話を書きます。(以上が前置き)

ヤマト2202には1974年の宇宙戦艦ヤマト第一作と、さらばヤマトの両方に対するアンサーが含まれています。実はこの2つの作品では重要なテーマが置き去りになっていました。

1.第一作の置き土産
第24話「死闘!!神よガミラスのために泣け!!」のラストシーン、いままで何度もこのブログで書いてますが、このエピソードの終わりで波動砲を使ってガミラスを滅亡に追い込んだ古代が「我々は戦わずに愛し合うべきだった」と嘆きます。でも実際にどうすればいいのかは描かれませんし、「イスカンダルに行こう。ほかにどうしようもないから」という、痛みを残す形になります。*2

2.さらばヤマトの置き土産
ラストシーンで星になって結婚しようという古代と雪の前にテレサがあらわれ、「ありがとう、古代さん。私はあなたの中に勇気と愛の姿を見せて頂きました。あなたのお陰で人々は目覚め、より美しい地球と宇宙のために働きだすでしょう」と語り、ヤマトとともに巨大戦艦に特攻します。これでさらばヤマトは終わりですが、本当に人々は目覚めるんでしょうか?美しい地球ってどういうことでしょうか?何も描かれないまま「ヤマトより愛をこめて」が流れて終わります。

このあたりのとても重い命題(というか宿題)に対して、真摯に向き合ったのがヤマト2202だと感じます。

・人は戦わずにわかりあえるのか?

ガンダムでも出てくる「人はわかりあえるのか?」という命題です。リメイクヤマトシリーズ(ヤマト2199、星巡る方舟、2202)では一貫して古代は異星人ともわかりあえるというスタンスを貫いていて、2202においては引き金を引かない古代のキャラクター像につながります。これがお花畑だと揶揄されたりするわけですが、2202の第23話で決定的な場面がやってきます。この場面の描き方がいいのです。みんなわかりあえるよね、とか、わかりあえるはずだ、とか、ララァにはいつでも会いに行けるから、とか、全員死んで転生してハッピーバースデー、といったかりそめの希望を描きませんでした。

ガトランティスは1000年も思考停止していたけど、考えようとしなかっただけだった。自分たちは、自分たちのことを何もわかってないんじゃないか。そして戦わないで済む方法があるというなら、ここで立ち止まってみてはどうだろうか。

こういった現実な落としどころへ着地します。
そもそも人間は別々の魂を持つ異質の存在なのだから、軋轢や争いが生じるのは当然です。愛し合うことはできないとしても、それでも一線を超えずに踏みとどまる勇気を持って、お互いに折り合いをつけられるように努力しよう、ということです。これは福井氏がガンダムUCやNTで描いたニュータイプ観や、違う魂を持つ人間も死ねば1つになってわかりあえるといったイデオンや旧エヴァ的な死生観とは本質的に異なっていて、リアリティと説得力がある着地点だと思います。
こうして第一作に対するアンサーが示されるのですが、残念ながらこの着地点は無残にも瓦解し、やはり人は戦うしかない、しかもどちらかが滅びるまで戦いは終わらないという悲劇的な結末、つまり「さらばヤマト」のルートへと舵を切ります。この痛ましい展開には、とてもヤマトらしさを感じました。

さらば宇宙戦艦ヤマト。その後の地球は、人はどうなるのか?

ヤマト2202第25話のサブタイトルが「さらば宇宙戦艦ヤマト」です。そして26話が最終回、つまり、さらばヤマト後の世界が描かれます。これは見ていただくしかない話です。初見のときは、なんだこりゃ、と面食らいました。でも人々が「より美しい地球と宇宙のため」の選択をしたとしたら、このエンディングになるのも理解できます。実際にはそうならないかもしれないし、ヤマトならではのロマンティックな後日談ではあります。でもその一方で、さらばヤマトでのテレサの言葉は40年の時を経てここに成就したと思って胸がいっぱいになりました。

※余談
真田さんは「古代進は、あなたです」と観客に向かっても言っているのですが、これは古代と同年代以下の若い人でないと響かない言葉ではないかと思いました。30代以降になると「私は芹沢です」という人のほうが多いと思います。実際、自分がツイッターでフォローしているヤマト好きの人たち、特に旧作世代の40代後半~50代の人は芹沢容認派がすごく多いです。大人はしがらみから逃れられないのよね。そんな大人目線だと、ヤマト2202の終わり方はファンタジーに過ぎないのですが、アニメの世界くらい夢を見てもいいと思うんですよ。そういうヤマトファンが見た夢を具現化した最終回だったと思います。第六章まで出番が少なかった森雪がしっかりヒロインの座に戻ってきたのも嬉しかったです。時間断層の決着もつけてくれると思っていましたが、人が自分たちの意思で決着の付け方を選ぶという展開はカタルシスがありました。しかもそのときのBGMが「Great Harmony」です。奇跡は起きるものではなく、ヤマト、大いなる和が奇跡を起こすのです。こりゃ泣けますよね。そして最後は愛を知った人間・ズォーダーのナレーションで終わります*3。最後まで抜かりのない、福井さんのいい仕事でした。
初見のときはこの最終回の流れが納得できなかったのに、2度、3度と見るにしたがって腑に落ちていくのが面白いです。

以上でヤマト2202の感想は終わりです。
でも音楽については、まだまだ書きたことがいっぱいありますし、いろいろ演奏したいと思っています。

*1:人物や動物を束縛する事象や道具のこと

*2:その後のさらばヤマトで描かれた古代の愛は「自分が信じる愛のために、断固として戦う」というものに変質していたので、けっこう批判がありました。別人になっているわけです。

*3:コメンタリーによるとあのズォーダーは若い頃のメンタリティに戻っているとのこと

宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち 第七章 BGM「大いなる愛」を演奏してUPしましたの巻

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賛否両論あるヤマト2202第七章ですが、私の感想はこの演奏で表現したつもりです(かっこつけ)
このアレンジは1985年に発売されたヤマトの公式楽譜集のオマケでついてきたカセットテープから羽田健太郎氏の見本演奏を耳コピしたものです。公式楽譜の10倍くらい音が増えてますけど。なおYAMATO SOUND ALMANACシリーズの「ピアノが奏でるヤマト・ラプソディ」というCDに収録されています。

いつもは自重して左手をセーブした演奏をしているのですが、ハネケン自身がかなり左手を強調していたのでラストは一切セーブしないで思い切りフォルティッシモでピアノを鳴らして気持ちよく弾かせていただきました。

ヤマト2202については書きたいことが山ほどありますが、そんな暇があったら劇伴を弾いていきたいです。そのくらい音楽が良かった。

大友克洋「童夢」イメージアルバム、35年を経てついにCD化の巻

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1980年代にアニメ音楽系レーベル主導で漫画の音楽アルバムがたくさん作られていました。漫画作品のイメージアルバムについてはこのブログではすでに何度か書いていますが、レーベル主導の制作はお決まりの粗製乱造を招き、OVAの台頭もあってイメージアルバムというジャンルは衰退します。そんな中にあって、このアルバムは作曲者が原作者に企画を持ち込むという形で作られた異例の作品です。イメージアルバムからOVAへ転換する1年前の1984年にリリースされています。

このアルバムは基本的にはエレクトロなロックサウンドで作られていて、テクノっぽい要素もあるので当時YMOやJapanが好きだった自分はかなりハマりました。でも、ある程度オトナになったら、わずかに入っているアコースティックな曲の良さに気づいてこんな曲をコピー演奏しています。

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原作の「童夢」も長らく絶版で入手困難ですが、これを期に再版していただきたいと思います。大友克洋先生の初期の傑作です。

DISC UNIONで予約するとレコードジャケットの帯がつくそうですw

 

体調不良中の巻

昨年末にひいた風邪と同じようなタイプの風邪にかかってしまいダウン。今回はしっかり発熱して辛かったです。ようやく復活してきました。

花粉症も出ているはずですが、風邪の症状でマスキングされてしまいよくわかりません。今年度は比較的体調が良くて、夏も無事に乗り切ったのに冬になってからガタッと弱くなってしまい残念極まりないです。

でも嘆いていても仕方ないので、切り替えていきましょう。
とりあえず超人ロックの新刊(ガイアの牙2巻)が週末に出ますし、別エピソード(鏡の檻)の4巻も4月末に発売決定でさっそく年間4冊ペースに戻りそうです。聖先生はどうか無理せず、がんばってください。