海獣の子供(映画) 感想の巻

絵と音がすごかったです(小並感)

しかし、この手の宇宙生命輪廻の物語で売ろうとしても、もはや商業作品としては成立しないのではないかと感じてしまいました。

なにしろ実写では2001年宇宙の旅があり、アニメでは伝説巨人イデオン発動篇があるのです。これらを知らない人でも、「新世紀エヴァンゲリオンAIR/まごころを、君に」や崖の上のポニョといった作品があり、日本でアニメを見てきた人にとっては既視感だらけの映画になってしまっています。

ただ、これらの過去作品を上回ることはできないにしても別の切り口から描くことはできると思うのです。しかし割と正攻法にボーイミーツガールの導入から、スターチャイルドエヴァでいう使徒)である兄弟の覚醒を描き、海のお祭り(イデの発動、エヴァでいうサードインパクト)へと移行するので、我々はいったい何番煎じを見せられているんだろう?という気分になります。

これに輪をかけてしまうのが、渚カヲルのような観念的なことをペラペラと喋るキャラクター達(複数)です。これはもうお経だと思って聞き流したほうがいいと思います(笑)

などと盛大にディスっておりますが、もう一つのテーマと思われる決裂と和解に関しては原作の省略の仕方がうまく(原作は未読ですけど、ああ省略したんだな、ということはわかる)、人間が関与しようがないあまりにも壮大な宇宙生命輪廻と、人間同士の生命輪廻(ぶっちゃけ子作り)をきれいに対比できていたと思います。稲垣吾郎が主人公の父親をやっていて、天然でエロい感じを非常にうまく演じていました。母親も同じですね。桃はセックス(というか赤ちゃんが生まれる)のメタファーです。わかりやすい。

そんなわけで、一発見ていろいろ理解できるのは年齢相応の経験を積んだ人ではないかと感じました。ただ子供には子供なりの視点もありますし、先に上げた過去作品を知らなくてチンプンカンプンになりつつも素晴らしい絵と音楽(久石譲がかつてないほどいい仕事をしている)を満喫できる作品だと思います。ビスタでなくスコープサイズ(幅広画面)で作ってほしかったですね。

ロジェ・ムラロ ピアノリサイタル@トッパンホールの巻

近年のフランス系ピアニストには優れたテクニックを持った人が複数いますが、ムラロ氏そのうちの一人です。CDはいろいろ持っていて、主観的なショパンには違和感がありましたが、ラヴェルドビュッシーの演奏は極めてオーセンティックです。以前の日本の公演はNHKで放映されていて、これがよかったのでリサイタルに行きました。

harnoncourt.hatenablog.com

 

プログラム
モーツァルト ピアノソナタ K310
ラヴェル 鏡
ショパン 前奏曲集 op.28
・アンコール J.S.バッハ(ムラロ編):《御身がともにあるならば》BWV508/ショパンノクターン第20番 嬰ハ短調 遺作

ラヴェル「鏡」が予想以上に素晴らしかったです。強弱、音色表現の幅がとにかく広い。しかし楽曲の把握力がすさまじいので、何をやっても説得力があります。
なおピアノはこの「鏡」に合わせて調整されていたと思われ、モーツァルトソナタでは第一楽章の音色制御に苦労したり(第二楽章から良かったです)、ショパン前奏曲集はピアニッシモが抜けるなど瑕疵もありましたが些細な問題でした。

 

※今後のトッパンホールでの公演
私の好きなピアニストが続々来日します。
ティーブン・オズボーン 11/1 ベートーヴェンソナタ30~32番
アレキサンドル・タロー 11/29 フランスバロック鍵盤楽器

C96(夏コミケ)にサークル参加しますの巻

コミケのスペースが取れました。
2日目(土曜日)南 オ-02b コスモピアニスト です。ヤマト2202の音楽本を出す予定です。

近況ですが、歯科の治療をはじめました。
唾液の分泌が悪くなる病気なので歯周病は必発といわれていて、しかし全身状態に不安があって年余に渡って放置していたのでけっこう悲惨な状況になってました。このたび主治医からOKが出たので、久しぶり歯科を受診しました。まず親知らずを抜きました(笑)。これ自体は大したことはなかったんですけど、歯石を取ったりするとあとになって痛いし、リンパ腺が腫れたり発熱もするので結構つらいです。いろいろ悪いところがあるので毎週少しずつ手を入れてもらう予定でしたが、体調的に無理そうなので隔週にしようと思います。この1年くらい以前より体調が良くなってきていましたので大丈夫だろうと思っていたんですけどね。やはり無理は禁物ですね。

YMO / BGM 2019リマスタリング盤レビューの巻

 YMOリマスタリング・シリーズの続編が出ました。今回はBGMとTECHNODELICの2枚ですが、とりあえずBGMのみについてレビューします。

BGM(特典無し)

BGM(特典無し)

 

BGMは自分が初めて買ったYMOのアルバムです。確か1983年ころに購入しているのでYMOはもう散開した後ですが、とにかくきちんとYMOに触れたのはこのときが初めてでした。
そのときの印象は、腰の座った太いサウンドがシルキーなベールの向こうから聞こえてくるというものでした。コンプレッションが効いた過激な音作りをしているけれど、一枚ベールを介すことで耳当たりがマイルドになっていると感じました。

ところが今回のリマスタリング盤は、そのベールを剥がしてしまいました。
結果、サウンドはクリアで分離が良くなり、個々の楽器の定位や音色がよりはっきりと伝わるようになっています。

これは通常なら良いマスタリングです。でもこのアルバムにおいては「違うそうじゃない」ということになるような気もしました。

羽田健太郎氏の命日に寄せての巻

今日はハネケンこと羽田健太郎氏の命日です。

自分は彼の大ファンで、小中学生の頃から耳コピしてはいろいろな曲を弾いてきました。ということで、ここにハネケン関係のピアノ演奏動画リストを公開します。下に行くにしたがって最近の動画になります。


宇宙戦艦ヤマト完結編「アクエリアス・レクイエム」を弾いてみた :楽譜付き
2013年の動画です。ヤマト完結編公開当時から弾いていましたが、当時のほうが上手かったような気がするので弾き直ししたいです。


マクロス 愛・おぼえていますかBGM「揺れ動く心」を弾いてみた:楽譜付き
大好きな曲ですが、愛おぼ公開当時は最初のピアノソロしか採譜できませんでした。いろいろ訓練してオケの採譜ができるようになり、ピアノレッスンを再開して多少上達したので弾ききることができました。


ヤマトよ永遠にBGM 「信じあう二人」を弾いてみた:楽譜つき
ここから2014年の動画です。公開当時自分は中学生で、生意気にも採譜チャレンジしてうまくいかず挫折していたのをリベンジしています。この曲が採譜できたので自信がついて、2014年はせきを切ったようにハネケン関係の楽曲をコピーしまくります。


さらば宇宙戦艦ヤマトBGM「想人」を弾いてみた:楽譜つき
この曲は音楽集とサントラで調性が違いますけど、サントラ版(D minor)が好きなのでそちらで弾きました。


宇宙戦艦ヤマトIII BGM 「ルダ王女の恋」を弾いてみた:楽譜つき
「信じあう二人」と同じコンセプトの曲で、演奏表現に注力してみました。


竹宮恵子「夏への扉」メインテーマを弾いてみた 羽田健太郎作曲:楽譜つき
夏への扉ハネケンサントラの隠れた名作で、公開当時から中途半端に耳コピしておりましたが、ようやくオケを含めて演奏できました。


さらば宇宙戦艦ヤマトBGM「大いなる愛」を弾いてみた:楽譜つき
冒頭は完コピでその後セルフアレンジという形になっています。


竹宮恵子:夏への扉 メインテーマ2 を弾いてみた 羽田健太郎 楽譜つき
今から考えると、夏への扉は低予算だったおかげでハネケンのピアノが満喫できたのではないかと思います。


宇宙戦艦ヤマト 2台ピアノ版 - 1人多重録音で弾いてみた
夏への扉のソロが弾けたのでこれも弾けるだろうとチャレンジ。なんとか弾けたのでいい気になって、ここから難度の高い曲が続きます。


宇宙戦艦ヤマト完結編BGM 「水の惑星アクエリアスとクイーン・オブ・アクエリアス」を弾いてみた 楽譜つき
さらにチャレンジ。


「渡る世間は鬼ばかり」作曲者による超絶技巧アレンジで弾いてみた:楽譜つき
さらにさらにチャレンジ。難しすぎて雑な演奏になってしまったのが反省点です。


伝説巨神イデオン 発動篇BGM 「死」を弾いてみた:楽譜付き
2016年の動画。ピアノによるコード4つ打ち系アニメBGMの歴史を俯瞰してみました。


宇宙戦士バルディオスBGM 「アフロディアに花束を」「思い出ブルー・ドリーム」を弾いてみた(楽譜付き)羽田健太郎
2018年の動画。念願だった思い出ブルー・ドリームをようやく弾きました。この動画でもコード4つ打ち系アニメBGMの歴史を振り返っています(笑)


宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち BGM「大いなる愛」を弾いてみた:楽譜付き Star Blazers Space BattleShip YAMATO 2202 OST
2019年の動画。
宇宙戦艦ヤマト音楽全集(楽譜集)の見本演奏からの耳コピです。当時(1985年)はあまり好きなアレンジではなかったんですが、改めて聞いていいなと思ったので弾きました。


宇宙戦艦ヤマト完結編BGM「ユキ」を弾いてみた:楽譜つき Star Blazers Space Battle Ship YAMATO OST "Yuki"
ヤマト完結編のサントラから耳コピしようと思っていたところ、大いなる愛と同時にこちらの見本演奏版を再発見したので弾きました。

以上です。
ハネケン関係の曲はまだまだ演奏したいものがたくさんあります。これからもずっと弾いていくつもりです。

映画「空母いぶき」感想の巻(ネタバレあり)

「空母いぶき」を見てきました。自分はの原作漫画にはやや批判的なスタンスです。自衛隊がチート的に強く、中国が一方的にやられすぎです。ただ、そのまま映画にしたら連戦連勝でカタルシスがあるエンタメにはなると思っていましたし、おそらく原作ファンはそれを望むと思いました。でも自分はそういう映画にはしてほしくありませんでした。

<視聴前の私>
脚本・伊藤和典という時点でそれほどひどいことにはならないのでは?という淡い期待がありつつも、製作委員会に負けるのではなかろうかという不安。
オリキャラ(特に本田翼)の絡みがどうなるか不安。まさか恋愛要素とか絡めないだろうな?ネットニュース社も、変なまとめサイトみたいなものじゃないよね?
仮想敵国という設定に関しても大いに不安がある。
予告編の作りがひどい。理解力がない人を想定した作りで、観客をバカにしすぎにもほどがある。そんなところまでハリウッドの真似する必要ないのに。
その予告編のテンポが悪く、本編もこの調子で2時間超だったら絶対にキツい。
バトル映画のお約束で戦闘シーン3回になったら2時間超は絶対に持て余す。
西島と佐々木以下、40代以上の俳優は大丈夫だろうが、それ以下の若手中堅どころは市原隼人以外は大丈夫かしら。

<視聴後の私>
杞憂だった。
騒動の始末の付け方がお花畑だったのは驚いたけど、原作よりずっと好きかも。

 

一番心配だったのが尺が長いので展開がダレるんじゃないかというところでしたが、エヴァ:破みたいに次々と敵が仕掛けてくるので緊張に次ぐ緊張でダレる暇がありません。2時間超があっという間に過ぎました。

あと原作で一番苦手な自衛隊がチート的に強いところを修正していたのがよかったです。実質的に勝利した戦闘でも人的損害が出たから大喜びしない、という表現はシン・ゴジラでも見られたものですが、この映画でもそれが引用されています。

仮想敵国はうまいことを考えたと思いました。
要するにガンダムのジオン共和国か宇宙戦艦ヤマトガミラスと同じで、よくわからない敵がいて、あちらも人間でそれなりの大義名分を持って戦いを仕掛けてくる、という図式です。建国3年で軍隊を整えられるのは非常識だとか、いや当然その前から軍備を整えているだろうとか、兵器を調達するルートを確立しているはずだとか、いろいろ想像の余地が働くのもいいです。これを中国にしてしまうと、現実の中国国家と整合性を取るためにさまざまな制約が生じます(原作が苦労している部分です)。
この仮想敵国設定のおかげで敵側を完全にフィクション化することができました。また敵側の事情を描かず、日本側の視点のみで一方的にストーリーを構築することができました。ここが重要で、原作は国対国、軍隊対軍隊を双方の視点から描くことでドラマを作っているのですが、映画では最初からそういうドラマを描かないようにして、ストーリーの軸をシンプルにすることに成功しているということです。
原作という重力に魂を引かれた人が、この部分で拒絶反応を起こして感情的に映画を否定しているように見受けられますが、非常に残念な話だと思います

本田翼の役どころに関しては、賛辞を惜しみません。これは見ていただければわかると思います。

政府の人や事務方の描き方は笑えるくらいシン・ゴジラをトレースしていて、中村育二なんか相変わらず総理に詰め寄る役なのでパロディ的にも楽しめると思います(いつ想定外だって言い出すか期待してしまった)。
外交がうまくいく(うまくいきすぎ)の結果、最終局面で逆転する展開もシン・ゴジラと同じですが、この映画はシン・ゴジラと違ってまるでカタルシスがないです。始末の付け方があっけないので拍子抜けします。でもそこがいい。そしてその後のエピローグで騒動の顛末をそれぞれのキャラクターが総括していくシーンが白眉です。ちょっと綺麗に描きすぎという気もしますが、フィクションですし気持ち良いエンディングにするにはこのくらいでもいいと感じました。

何度もシン・ゴジラの名前を出しましたが、原作やシン・ゴジラとの違いは、徹底的に自衛隊の存在意義を問うている点だと思います。さまざまな登場人物が、それぞれの立場で自衛隊の存在意義や、運用にあたっての譲れない方針(ポリシー)を考えている様子が何度も繰り返し描かれます。みんなの結論はただ一つ「国民の平穏な生活を守るため」なのですが、そこに至るのにもいろいろな考え方があり、実際になにをどこまでやるかという解釈も違うのだ、という多様性の表現が心を打ちます。

小ネタとしては、空自と海自の差異の表現が良かったと思います。空自はほぼヤマト2202の航空隊でしたが、出番をひっぱりまくります。最初から命を捨てているような市原隼人の険しい表情が印象的。あと柿沼くんと関西弁のおっちゃんが真のヒロイン。ダブルヒロインですわ。

ショパンのポロネーズを弾いてみるの巻

思い立って弾いてみました。

まず英雄。
ほぼ忘れているので譜読みからやり直しという感じながら、曲の流れは覚えているのでそこそこ弾けました。以前は10度アルペジョをきちんと弾けていなかったという反省があり、ものすごくイメージトレーニングを積んでいたので、イメージ通りに弾けるようになっていました。ピアノに向かわなくても練習はできます(笑)
あとミレドシのパートの右手が以前よりずっとうまく弾けるようになっていて驚いた。最近あまり真面目に基礎練習していないんですけど、指の独立性は以前より良好なようです。

次に4番。
4番はまともに弾いたことがないのですが譜読みは難しくはありません。しかし音楽的に弾くのは地味に難しい曲。どうしても低音の響きが濁ってしまいます。これはペダルの練習が必要ですね。

最後に5番。
苦手な嬰ヘ短調で弾ける気がしなかったんですけどそこそこ弾けてしまいました。手に馴染めばいけそうな予感がしてたので、逆に突っ込んで練習しないことにしました(音楽的に難しくて苦労しそうなので)。

あとダンテも久しぶりに弾いてみたら以前より無理なく弾けるようになっていて成長を感じました。というか成長していなければ困ります。

とりあえずポロネーズ4番に取り組んでみようかなという感じですがバッハのイギリス組曲も弾きたいし予定は未定。いろんな曲に手を出すけど最後まで仕上げないという悪い病気を発症しております。