シン・ゴジラ最高だったの巻

ネタバレ感想です。要注意。
現時点で2回しか見ていないので、認識や時系列がおかしかったりすると思いますが、気持ちが新鮮なうちにまとめます。

全体的な感想

まず、冒頭の東宝ロゴ3連発で勝ったと確信しました。圧倒的に勝った。まだ本編始まってないけど、圧勝したと確信したのです。
つづいて、ファーストカットでも勝ちました。エヴァ序と同じようなテンションで始まって、例のテロップがバンバン出はじめたところで、「OK、このノリでいくのね」「この庵野秀明は絶好調だから、この映画すごいことになる」と覚悟を決めました。うちらは*1エヴァ(特にデスリバあたり)のスピード感で鍛えられてるので、高速カット割りでも置いてきぼりを食らうことはないと思いますが、慣れない人は大変だと思います。最初から最後までテンションが高くて、とても気持ちがいい映画でした。でも、この映画の魅力はそこだけではありません。

ゴジラ第一(ニ?)形態の侵攻の描写が津波っぽかったり、放射線モニターの映像がSPPEDI風だったりと、随所に東日本大震災を意識した映像がありました。しかし、描かれているのは災厄の悲惨さや被災した人の悲劇ではなく、それを乗り越えようとする人々の力強さです。誰ひとりとして諦めず、一人ひとりが、自らの役割を果たす。そんな人々のちからを、ポジティブに描いた群像劇だったと思います。
見終わった後、出張で関西に向かうために新幹線(もちろんN700系)に乗ったのですが、林立するビルを見上げながら、このビル群がゴジラに破壊されるのかと、感慨に浸りました。虚構と現実の交錯ですね。
また、いままでの庵野さんの作品は、映像そのものがかっこよかったり、ストーリーに感動したりということはありましたが、エンタメ的な要素が強かったので、伝わってくるテーマみたいなものは、良くも悪くもあまりなかったと思うんです。
シン・ゴジラも極上のエンタメ作品ですが、震災後の日本をポジティブに捉えるメッセージが明確に打ち出されていました。これは、意外に思いましたが、素直に嬉しかったです。自分はペシミスティックに(悲観的に)考えて生きるのはつまらないと常々思っていますが、この映画も、どんな状況であっても将来には希望を持っていこう、われわれにはそれができるはずだ、と力強く伝えている映画だと思います。

細かなここと

<キャラクター描写について>
シン・ゴジラエヴァと似ているのは、映像表現や劇伴(BGM)といった、あくまでも表面的な手法だけです*2。ほかはかなり異なります。真逆と言っていいこともあります。
たとえば、エヴァは各キャラクターの掘り下げるために、内面をしっかり描いています。特に新劇場版は「碇シンジの物語」と言い切るほどシンジを掘り下げていますけれど、シン・ゴジラはそういう繊細な人物描写をほとんど捨てています。大事なのは個々の登場人物ではなく、周囲で起きているドラマである、という宣言をしているようなものです。そのドラマの中で、それぞれの登場人物のひととなりが見えてくるような、巧妙な作りになっています。なので、中盤以降は次に喋るセリフが予想できるようになるんですね。画面を見ながら、やべぇついキレちゃったよ水を飲んだあとで「すまん」って謝ろう、とか、こんなことで歴史に名を残すことになるなんて、とか、登場人物と全く同じことを考えるようになってしまいます。これはすごい。たった1時間かそこらで、主要な登場人物の言動が自然に理解できるのです。
こんな感じで、ドラマの中で人物描写をすすめるのが基本路線の中で、他人からがっつり掘り下げられていくキャラクターがいます。それが、ゴジラであり、牧博士なのです。
だから、やっぱり牧博士はゴジラに取り込まれたと見るのが妥当だと思います。「食べられた」でもいいと思う。碇ゲンドウかよ、と突っ込みましょうw*3
しかし、登場人物はみんな個性的で楽しかったですね。主人公ポジションの矢口蘭堂が意外と熱血漢で、それを抑える赤坂さんは、名前は赤いけどいわゆるアオレンジャーのポジションに相当すると思います。もちろん、キレンジャーもいます。本作ではキレンジャー(すでに自分の中ではこの呼び方が定着した泉さん)が裏方として大活躍です。政治の裏方というか、調整役の人にスポットが当たるのは珍しいのではないでしょうか。
あと津田寛治が演じる森文哉(厚生労働省医政局研究開発振興課長)*4と、彼がトップを勤めるマッドな連中が集まった組織が最高にイカしてました。科学忍者隊のスタッフですね。
命令を出す前にやたら溜める首相がすごくよかった。首相は2人出てきますけど、どちらも劇中で変わっていく(好きなことをやるようになる)のがかっこいいです。微妙なため具合、声の調子や表情の違いで、変化を表現していました。さすがですね。カヨコも、日本人見下し状態から、徐々に「日本けっこうやるじゃん」に変化していくのがアメリカ人らしいと思いました。
ちょっとしか登場しない豪華俳優陣の配置も的確でした。そしてピエール瀧は、ここでもやっぱりめちゃくちゃかっこよかった。

<構成や演出について>
エヴァのアスカ+ミサトっぽいカヨコの登場で、一気にトンデモ世界に突入するのが面白かったです。前半は、ゴジラ本体以外は徹底的にリアリズム路線でドキュメンタリータッチなのに、カヨコの登場とともに、フィクション度が急上昇します。ひとつまちがえるとマンガになってしまう恐れもある中で、事態の緊迫度も上昇して、深夜の東京大破壊(屈指の名シーン)や、核兵器、牧博士の残したヒントなど、最後の戦いに向けて収束していく演出はさすがでした。あと緩急の付け方が秀逸で、「中略」を始めとして、切るところをバッサリ切りつつ、戦闘シーンはリアルタイムで展開するので伝令も1段階ずつ描写するなど、カット割りを含め緻密な計算がなされていたと思います。戦闘自体は、あらかじめやることを決めておいて、プランどおり粛々と実行していくというリアルな描き方です。武器を撃つ前にやたらと溜めるアニメや映画は、反省すべきですよ。

<映像表現について>
真っ昼間に堂々とゴジラを上陸させるのがチャレンジだと思いました。CGのウソがバレやすいのに。
あとゴジラの形態変化はびっくりしました。っていうか、自分たちが知ってるゴジラの形になって、第4形態です!というセリフが入るんですけど、「えっ、第1〜第3ってどれ?!」って思いましたよw*5最初の上陸形態が第二なんですけど、知ってる形じゃないからショックがすごかった。夜間の東京大破壊は、たぶんゴジラ映画史上に残る名シーンだと思います。最終決戦は無人運転列車爆弾で頭パーンなりました。頭パーン。最高ですわ。

<音楽について>
音楽は、当初はあまり使わない予定だったようですが、結果的には尺の半分くらいは音楽が流れっぱなしでした。昔の音楽を積極的に使っているのがポイントですね。サントラCDで鷺巣先生+早川さんが同じ曲に対してそれぞれ詳しい解説を書いているので、とても参考になります。エヴァンゲリオンでおなじみEM20(デンデンデン・デン・ドンドン)を5回も使いますが、毎回アレンジが違っています。また、エヴァQの音楽集に収録された*6「Famously...」が非常に効果的に使われています。
今回、音楽のせいで泣けてしまったシーンがいくつかありまして、一つはいうまでもなく「ゴジラゴジラゴジラメカゴジラ」ですが、エヴァQのKindred Spirtsを彷彿させる名曲「Who is know」や、無人運転N700系が突っ込んでく場面の宇宙大戦争とか、庵野さんの選曲センス本当に最高だと思いました。サービス精神がありますね。

まだ書き足りないことがあると思うんですが、とりあえずここまで。サントラから何か弾く予定ですwww

Who will knowの楽譜です。

*1:うちらってw

*2:この件に関しては、エヴァで使われる手法ががゴジラに似ているというべき

*3:牧博士とゲンドウの類似性は語られ尽くしてるので割愛

*4:長い

*5:それを確認するために2度めを見ることになる

*6:エヴァQ本編では未使用