シン・エヴァンゲリオン解説:そして少年は神話になるの巻

ツイッターはてなブコメでも書いてきたのですが、ブログにまとめておきます。

シン・エヴァンゲリオンでのシンジの決着の付け方は、SF作品としてはかなり王道です。エヴァの世界は何度もループしていることが示されましたが、その特異点となっているのがシンジです。シンジを特異点たらしめた要素は、エヴァやカヲルやユイなので、これらを世界から消去するのがループからの離脱条件になります。シンジはエヴァのない世界を望み、ヴィレの槍を使って自分自身もろともエヴァを消して世界の再創造を行おうとします。

しかしユイがそれを阻止して、ユイとエヴァが抹消されることになりました。ユイもエヴァも神なので、まさしく神殺しです。また、ユイとゲンドウはシンジの両親でもあるので、少年が大人になるための通過儀式である親殺しも兼ねることになります。このあたりまでは物語としては極めて王道の展開だと思います。

世界を作り直すと、作り直される前の世界(これがイマジナリーな世界として提示される)にいた特異点は世界もろとも消滅してしまいます。つまりシンジも消えてしまうのです。そこで登場したのがマリです。マリが消えゆくイマジナリーな世界からわれわれ視聴者のいる世界にシンジを連れ出すことで、シンジの消滅を阻止しました。これにはびっくりしましたね。でもユイから託されていたかもしれないとか、いろいろ想像の余地がありますね。

ネオンジェネシスの儀式が完了したあとで、ヴィレのクルーやアスカは第3村に戻ったことが示されています。第3村は再創造された新しい世界で存在しているのです。そこではアスカやケンスケやトウジたちはシンジが帰ってくるのをいつまでも待っていると思います。そして長い長い時間が経過したのち、世界を創造した少年のことが神話として語り継がれるようになるでしょう。

エヴァ新劇場版では残酷な天使のテーゼが使われませんでしたが、そのストーリーはまさにあの歌詞のとおりだったというわけです。

 

以下余談。

自分はシンエヴァの決着の付け方をずっと考えていましたが、エヴァとユイだけでなくカヲルとリリスも消去しないと解決しないと思ってました。実際、旧劇場版ではアダムを取り込んだリリスは最後に崩壊して終わっていますので、同じような描写があると思っていたんです。ところが登場したのはエヴァンゲリオン・イマジナリーですよ。こんな隠し玉を用意しているとは思わなかった。しかもエヴァイマジナリーちゃん、崩壊する直前にも笑ってるように見えるのよ。

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こういう細かな演出がシンエヴァを後味のよい映画にしているんだろうなと思います。