橋本治が好きだったの巻

どこで知ったのか忘れちゃったけど、1980年代に桃尻娘シリーズを読んで、その中のBLエピソード(木川田君x磯村君)に非常に感動して、橋本治の大ファンになってました。

社会人になってからは彼の講演会とかも聞きに行ったりしたんですけど、延々編み物の話をしたり*1、LG(BT)界隈の際どいエピソードやらなにやらを面白おかしく聞かせれくれたり、とにかく頭の回転が速くて、人を楽しませることが好きな人だなという印象でした。

90年代ころのサブカル界隈(今のサブカルとは全く違います)の人はたいがい橋本治を読んでいた印象があります。私も今日ツイッターを検索して知ったのですが、クチの悪いオネエ様がたは「最近の若い子は橋本治を読まないからバカなのよ」などと言っているようで、橋本治は20世紀末~21世紀初頭において一部の人たちの思想的支柱になっていたのではないか?とか、やや大げさなことを考えてしまいました。

ということで、桃尻娘のBLエピソードの本を紹介。 

当時はまだBLなんて言葉がなかったけど、この本と、これに続く「桃尻娘無花果少年」は普通の男の子同士の友情~恋愛模様を自然体で描いた傑作だと思います。最初はゲイの木川田くんが一方的にノンケ友人の磯村くんを好きになるという、今の時代ならよくあるBLですが、木川田くんが学業に専念し始めて磯村くんへの想いが昇華してきたあたりで、磯村くんが木川田くんのことが好きだと自覚してとんでもない行動に出る、という流れになっています。

アパートのベッドで一緒に眠る二人、冷蔵庫には木川田くんが買ってきたプリンが2つポツンと並んでいる・・・という描写に感銘を受けたのでした。寂しさと愛おしさの混ざった感情の表現としては、これ以上ない描写だと思います。それでいろいろあってめでたく(?)二人はカップルになるんですけど、決してべたべたした付き合いではなくて*2、でもふとしたきっかけで磯村くんが「僕はやっぱり木川田のことが好きなんだなあ」とか零すのが本当に尊いと思いました。愛ですねえ。

なお作者によると木川田くんには自分が投影されているという話です。じゃあ磯村くんは誰なのでしょうね?残念ながら、永遠の謎になってしまいました。

最後に「紅い夕日の無花果少年達(いちじくボーイズ)」より、いまでも忘れない一節を引用しつつ、ご冥福をお祈りしたいと思います。

僕にだって素敵な未来があるって思えてきた。だから「またね」

 またね。 

*1:橋本氏は編み物名人

*2:ただの友人だった頃の延長線上ということがよく伝わってくる