ルドルフ・ブッフビンダーのモーツァルト:ピアノ協奏曲全集の巻

オケはウィーン交響楽団。弾き振り。ブッフビンダーは内田光子の技術面がヴィルトゥオーゾになって弱点が消え、しかし演奏解釈は少し醒めたようなタイプのピアニストで、要するにめちゃウマかつ聴きやすい演奏をする人です。でもウィーンっ子の使命感からかシュトラウスの超絶技巧編曲とか、ディアベリの変奏曲(ベートーヴェンのやつと50人くらいがよってたかって作ったやつの両方!)みたいな狂った曲を録音していて、かなり好きです。なんだかんだでほとんどCDを持ってるのですが、この全集は悩んだんです。どっかで映像を見ることができたんですが、「お仕事」って感じで弾いてるので。高いし。で、まあ結局買って先週くらいからマニクロやりつつ聴いたりしているわけですが、やっぱり全体としては「お仕事」で、テキパキ弾いてる曲が多くて1回聞いて終わりでいいやって雰囲気です。しかし特定曲が異様にテンションが高く、聞き流すわけにもいかないという状況。
特定曲というのは想像できるとおり20番ニ短調や24番ハ短調で、たぶんこの2曲は子供のころから弾いてるんでしょうね、もう手の内に入った感じとか、ちょっとしたフレーズのアーティキュレーションや装飾が段違いに精度が高いです。この2曲に関しては私は内田光子の演奏が最高だと思ってるんですが、恨み骨髄って感じのドロドロみっちゃんと比較すると適度に距離感を持ったブッフビンダーの演奏はとても聴きやすい。とはいうものの20番第一楽章なんか相当にオケを煽っていてものすごい気迫です。思わず泣きそうになってしまった。おっさん頼むからいつもこのテンションで仕事してよ〜。そしたらピアニスト史に残るよ絶対。この人の演奏会行ったことあるけど、基本スタンス的に「ピアノ弾くのなんか簡単よ。チョチョイのチョイ」って感じで、なんかすげえムカツクのです。アホみたいに巧いし。でもブレンデルとかみっちゃんみたいな、音楽ってたのしい!ピアノだいすき!オレいま最高に充実!みたいな聴衆を巻き込むようなオーラがあまりなく、アピール力が弱いのかなと。ぶっちゃけピアニストって、技巧的な巧さよりもそういうスター性があるかどうかが勝負だと思うので、ブッフビンダーさんが玄人受け&レッスンのお手本ピアニスト止まりの評価になっちゃってるのはそういうところなのかなあと思ったのでした。