耳コピのやり方やコツの巻

たまに耳コピのコツを聞かれるのです。正直なところコツなんかなくて、地道にソルフェージュをやってください、というところになります。ただ耳コピ自体がソルフェージュの一種ですから、耳コピのためにソルフェージュをやるのは効率が悪いといえます。さらに耳コピでは一般的なソルフェージュでは学ばない【アンサンブルの中で使われる音色や楽器を聞き分け、頭の中で個別の楽器に分離する】という、オーケストレーションを逆分析するようなソルフェージュ力が必要になります。

実はこの分離型の耳コピは、素人のみなさんも普段からやっています。ボーカル入りの曲を聞いて、歌とオケを聞き分けられない人はまずいないと思います。ボーカルを聞き取れれば、その歌を真似られます。あとは鍵盤を探りながら音符に置き換えればメロディの耳コピは完了です。これと同じことを他の楽器でもやっていくと、完コピ譜ができあがります。

問題は、ピアノやギターなどで一人で弾けるような形で耳コピすることだと思います。これには音を聞き取るだけでなくアレンジ力が必要になってきますので、ソルフェージュとは別の話になってしまいます。

つまり耳コピには(1)音を聞き取って譜面化する能力と、(2)それを演奏する楽器において体裁の整った楽曲として作り変えるアレンジ力の2つの能力が必要になります。

アレンジの勉強をできるよい教材は残念ながら存在しないのではないかと思います。ぶっちゃけ、演奏効果が高くてそれほど難しくなく弾ける伴奏パターンが求められると思うんですけど、そういうものをまとめた虎の巻のようなものって見当たらないですよね。なので、アレンジや伴奏の型も耳コピで覚えていくしかないという事態が起きます。

結論としては、打ち込みや多重録音になる前の時期の楽曲から耳コピするのがよいと思います。つまり1960年代~80年代前半までです。洋楽ならエルトン・ジョンビリー・ジョエル耳コピしましょう、日本のポップスなら羽田健太郎氏らが関わっていた70年代後半~80年代ポップスがよいです。あと荒井由実は必須です。初心者なら荒井由実のファーストアルバムを数曲耳コピすることをおすすめしたいです。ユーミン自身がピアノを弾いているので、初心者でも弾けます。

それと嫌う人も多いんですけど、リチャード・クレイダーマンの「渚のアデリーヌ」はポップスピアノアレンジの基本中の基本なので履修しておくべきです。6度でハーモナイズされた旋律と、10度音程のアルペジオ伴奏が基本中の基本事項です。素人はハモリを作るときに3度にしがちですが、楽器で演奏してきれいに響くのは6度です。左手の伴奏もドミソと弾くよりドソミと広い音程を取ったほうが演奏効果が高いです。ちなみに久石譲さんの人気のあるピアノ曲は、リチャード・クレイダーマンとほぼ同じセオリーで作られています。