ラフマニノフのピアノ協奏曲の巻

職場の人に頼まれてラフマニノフのピアノ協奏曲第2番をダビングしたんです。一時期べらぼうにハマった曲なので何枚もCD持ってるんですけど、とりあえずアシュケナージ=プレヴィン盤にしました。というわけで、久々にアシュケナージを聴いていて「おや?」と思いました。私が言うのもおこがましいですが、演奏が怪しくなる箇所がいろいろあるのです。アシュケナージさんは指が太くて短いため弾ききれないんでしょうね。第3楽章の入りの「グリッサンド風に」と指定されたカデンツァなどは、たどたどしく感じるほどでした。もちろん、全体としては甘いロマンティシズムと暗い絶望感のバランスが絶妙に取れた超名演なのですが。
最近のこの曲の録音では、クリスティアン・ツィメルマンがこれでもかいうほど完璧に弾ききっています。指の運動性能に限定すると、近年の若手〜中堅ピアニストの演奏技術は往年の名手を確実に上回っています。ツィメルマンのように、それが音楽的に良い方向に作用する人もいれば、単なるサーカス芸の披露に終わってしまうような人もいます。あ、サーカスを否定してるわけではありません。たとえばラン・ランの演奏ってある意味サーカス(京劇?)なんですけど、とっても楽しいですよね。あとデニス・マツーエフとかニコライ・ルガンスキーとか、もう典型的なロシアン・サーカスのピアニズムだと思っていたのに、絢爛たる技巧はそのまま音楽的な深みを増していく人もいます。巨匠の不在が続くクラシック音楽界ですが、いま現役のピアニストには巨匠予備軍が大勢いると思うので、見守っていきたいです。