BShiのハイビジョン特集「ショパンのミステリー」という番組で仲道郁代さんがショパンの幻想即興曲を解説していたのですが、なにげなく弾いているフレーズがルービンシュタイン版でした。そして直後にフォンタナ版のフレーズを弾いていました。番組中では2つの版の違いの言及はなかったのですが、仲道さんがルービンシュタイン版を知っていることは確実です。と思っていたら、なんと彼女はショパンの即興曲集を録音するときに2つの版を両方とも収録していたんです。これはすごい。「ショパンのミステリー」では嬉々としてショパンうんちく話を繰り広げる仲道さんを見ることができましたが、さもありなんという感じです。
「ぴあのピア」のショパン編では、仲道さんは英雄ポロネーズなどを弾いていました。そのとき、普通に流通している楽譜とは違う装飾音を多用するなど一人だけ独自性を際立たせていたので感心していたのですが、やはり楽譜オタクだったみたいです(笑)。彼女の英雄ポロネーズの弾き方については、変な演奏だと感じた人もいたようです。中には自分の持っている楽譜と比較して「ここが違う、あれが違う」と間違い探しのように差異を見つけている人もいました。しかし私としては、仲道さんの解釈には一定の方向性があり「間違いだ」と言いきる人は少々勉強不足ではないかと感じました。特に、装飾音の簡略化はきちんとした古典的規範に則ったものでしたので、ショパンの持つ音楽的理念からはずれていないと思います。
ところで、私のピアノの先生が彼女と同年代だそうでして、いろいろな逸話を聞かせてくれましたが、フェミニンな外見に似合わず硬派で男っぽい人だとのこと(まあ、女性ピアニストはみんなそうだとは思うのですが)。確かに彼女の弾き方は男性的で、ショパンにしてもソナタやバラードを構築的に聞かせています。というわけで、仲道郁代さんは結構すごいかもしれない、という話でした。