ラフマニノフを弾いてみたの巻

思うところがあって、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番を弾いてみました。第3番のほうは以前かなり細かくアナリーゼしたこともあったのですが、第2番はあまりきちんと見ていなかったので、いっちょ譜読みしてみようと。で、この曲は循環形式で、第一楽章の主題が最後まで延々使い回されます*1

第一楽章

冒頭の和音がいきなり演奏困難。ごまかしながら弾くしかない。続いて入るアルペジョは基本的に9連符+8分音符なのですが、ときどき9+9とか8+9とかが混じって一定しないのでイヤーンな感じ。だいたい左手の音域が広くて大変。あと「Piu Mosso指示でいきなり怒涛のような高速パッセージ地獄」が好きらしく、推移になるといつもそのパターン(笑)。有名な展開部の鐘のパッセージも高速で難しい。その辺さえ乗り切ってしまえば大したことない。全体的に左手の奏法がポイントで、音域の広いアルペジョが延々つづくので、なんだか革命のエチュードを弾いているような錯覚をおぼえます。難易度9くらい。和声的にシンプルなのでショパンソナタ2番と比べると譜読みもラク、という感じ。もっと超絶的に難しいと思っていたので拍子抜け。

第二楽章

これも有名ですが、三連符の4つ取りという変則パターンで進行します。中間部の高速パッセージが鬼だけど、やっぱり難易度9くらい。高速パッセージが重音だったら難易度10になるところですが、どうもラフマニノフは重音が苦手っぽいです。あと、ショパンのように片手を1−2/3−4−5とグループ分けして2つの役割をやらせるのも苦手っぽい。ポリフォニックな書法というと「オクターブを弾かせながら、中の指でチョコチョコ」しかなく*2、対位法的書法が異様に弱い気がします。ぶっちゃけ、作曲家としてレベル低い?

第三楽章

いきなり難易度アップ。この楽章だけ飛びぬけて難しく挫折。でも単音の速いパッセージと和音ドカ弾きしかなく、やはりピアノパートの書法は稚拙。展開部で取って付けたようなフガートが入るのが微笑ましいが、ここは聴いていても恥かしいところ。

結論

全体としてはオーケストラと合わせたときに演奏効果が上がるように工夫されており、ピアノパートだけ弾くとつまらない箇所があったりします。動機の展開は頑張っているのですが柔軟性に乏しく、やはり内容の希薄な曲のように思えます。少なくともチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番の方が音楽的には優れています。ただ、ラフマニノフのこの曲はなんといっても第二主題で悶え死ねる、という特性があって、そこは重要です。鬱病の人がリハビリで書いているのですから、雑な部分があるのは仕方ないよね、という気もします。
なぜこんなに見方が厳しいのかというと、昨日の日記にもあるようにここのところラヴェルを勉強しているからです。「夜のガスパール」の恐ろしさ複雑さに比べたら、この曲の書法や演奏技術はとても素直です。ラヴェルを譜読みするのは脳をフル回転にしても追いつかないのでCPUを追加したくなりますが、ラフマニノフのこの曲はCPUのクロック数そのままでOK、みたいな感じ。ただ、ラフマニノフ本人の手が異常に大きいので、一般人には演奏困難なパッセージになりがちというところがポイントです。

*1:ラフマニノフはこのパターンが多い。交響曲第2番もそう。

*2:指が長い人らしいパッセージ