ミハイル・プレトニョフ ピアノリサイタルの巻

ピアニストとしての活動を再開したプレトニョフのリサイタルに行ってきました。
ピアノはシゲル・カワイのフルコンモデルでした。たぶん、カワイの人も「うちのピアノってこんなに音色が多彩だったの?」って驚いたであろう2時間強でしたw

全体をとおして弱音のニュアンスの変化が印象に残りましたが、とにかく音色が多彩です。ホジャイノフもすごかったのですが、プレトニョフのほうは限界まで音量を絞っても、安定して速いパッセージを弾けるという謎のテクニックがありますね。あのテクニックは本当に謎です。日本にはメカニカルな正確さがテクニックだと思ってる人がすごく多くて腹が立つんですけど、プレトニョフやホジャイノフのように、多彩な音色をきちんとコントロールして使い分けるタッチの制御こそがテクニックだと思います。すごかったのは低音域の響きの制御で、速いパッセージでペダルを踏むと、低域がゴーゴー鳴って分離しなくなりがちですけど、この人はクリアに分離して聞こえるのでした。ペダリングがうまいんでしょうね。ペダルを踏むか離すか、ギリギリのところで使っていると思います。
と連れも言っていたのですが、ホロヴィッツゆずりの技術を持ったピアニストではないかと思います。
演奏内容については、ことごとく変化球という感じのモーツァルトの解釈には首を傾げたくなりましたが(笑)、シューマンベートーヴェンは解釈的にも共感できるものでした。とにかくカンタービレの表現が素晴らしい。プレトニョフのテクニックはすごすぎて、自分には到底盗めないんですけど、ロマンティックなカンタービレは参考にしたいです。フモレスケはシューマンの複雑な想いが伝わってくるようでした。多彩な音色の使い分けも、きちんとした演奏設計があった上のことですし、テンペストも第二楽章の幻想的なアルペジョなど、とても感動しました。
なおアンコールは、弾くならこの曲だろうなと思っていた、シューベルト即興曲でした。これも本当に名演でした。