音楽用語シリーズ:モデラートの巻

モデラート moderato といったら「中くらいのテンポ」です。
でも、中くらいってどのくらいなのよ?とみんな悩んでしまう、困った音楽用語でもあります。

例によってイタリア語の語源をたどってみると moderato には「穏やか」という意味があります。例えば Allegro moderato は「穏やかに速く」です。ということで、単に moderato という指定があったときは、速くなく穏やかに聞こえるテンポということになりそうです。

なお語源はラテン語の modus です。この言葉には抑制とか限度といった意味があって、過剰さを抑制するニュアンスなんですね。ちなにみ英語だと medium (ミディアム)です。
これらの言葉の意味からモデラートとは中くらいのテンポではなく、速くなく穏やかなテンポ=わりと遅めと考えたほうがよいことがわかります。

YAMAHA reface CSでフォト・ムジークを演奏してUPしましたの巻

www.youtube.comhttps://www.youtube.com/watch?v=YTndrct9rVo

 

www.nicovideo.jp

ようやくUPできました。ミックスがなかなか決まらなくて疲れた(;´Д`)

ムービー編集のために職場の同僚から教えてもらった fimora というソフトを使いました。使いやすいです。中華製らしいのでドキドキですがw

動画の中で解説を書いているとおり、ものすごくたくさんエフェクトを使ってます。
わかりやすいのが右から左に飛ぶシンセブラスで、これはSC-88やINTEGRA-7でやったときは左右の音を別々に打ち込んで再現しましたが今回ようやくディレイで飛ばせました。あと主メロの音はフランジャーを通さないとこの感じにならないです。
ダイナミクス系のエフェクトはコンプレッサー・リミッターをほぼ全チャンネルで使って、マスタリングでもトータルコンプをかけてます。当時のアナログ録音のサウンドを再現するのにはdbx 160Aが最適ですw

シンセ音楽の多重録音は25年ぶりくらいで、しかも80年代サウンドの再現ということでいろいろ苦労しました。自分流でやるとクリアでタイトなサウンドになってしまうので、そうでないようにするのが大変でした。

今日のフォトムジーク(reface CS版)進捗の巻4

仮ミックス~マスタリングまで実施しました。特に問題がなければ明日UPしたいです。

今日の主な作業はエフェクトの詰めでした。少し自分に厳しくなってシンセの個々の音色を原曲に近づけようとしたところ、半分くらいトラックが差し替えになりました(汗)。MULTI SAWを使ったパートの音が厚すぎたのでことごとくPWMに変更しています。あとrefaceのエフェクトをつかって録ったトラックを、エフェクトなしに入れ替えてDAWでエフェクトを乗せるとか、いろいろ変更しています。とにかくレゾナンスが上がった音が多くて、この時期の教授はレゾナンスが好きなんだなあと改めて実感しました。

エフェクトの一番のポイントは、Aメロの旋律音とシンセブラスの分離を図ったところです。旋律音の余韻はハイをカット、ブラスは長めのリバーブでハイを上げ気味にしています。これは原曲を分析して判明しました。

 インサーションエフェクトを5~6種類使った音もあります。シンセの素の音だと耳に刺さるようなサウンドになってしまうのでディレイやコーラスで輪郭をぼかしたり、コンプレッサーを多重がけして自然な音圧感を作り上げたりしています。

とにかく今日はエフェクト使いまくりで疲れました。エレクトリックな音楽は演奏と録音だけでは終わらないので本当に大変です(;´∀`)

劇場版 CITY HUNTER 新宿 PRIVATE EYES の巻

最近バブル世代~団塊ジュニア狙いのリバイバルアニメが多いんですが、今年度はこれで終わりかな?というところで、満を持して登場のシティーハンターです。

現代が舞台なので、登場するガジェット類も現代的、設定も現代的にアップデートされています。しかし、シナリオや演出はまったくアップデートされてなさそうです。実は自分は80~90年代のシティーハンターを見たことがないんですが、当時のまんまなんだろうなってことはわかります(笑)

獠と香の微妙な関係性の描写が秀逸でした。
本命でない人には常にもっこりするのに、香が相手だとツンになるので子供みたいなやつだなと思って見ていたら、自称二十歳だそうなので、まあいいかという感じです*1

サブキャラだと海坊主さんが最高。あと一龍斎春水(旧名:麻上洋子)さんは相変わらず色っぽい演技でした~。

ストーリーや展開的にはものすごいサプライズはなく割と予定調和ですが、最初から最後までクスッと笑えるようなコネタが満載です。そして実は音楽がサプライズ要素になっています。Get Wildは当然ですが、当時の音楽がかなりたくさん使われますので、音楽目当てで見に行っても楽しめると思います。パンフに曲目一覧がないことだけが惜しかったです。

*1:本当は30歳らしい?

シャンドール ピアノ教本の巻

クラシックピアノのメソッド本です。個人的にはその最高峰だと感じました。でも機械的な練習法はほとんど載ってないです。そんなものは無駄だっていうのがシャンドール先生の主張なので。シャンドール先生があれだけ音楽的な演奏ができる秘密がこの本で明かされているように思いますし、技術レベルが心許ないアマチュアこそ、こういうメソッドを参考にしたほうが良いのではないかと思います。ムキになって指を鍛える必要はない。それはむしろ悪である。音楽っていうのはそういうものではなくてね、と諭してくれる本です。

そのむかし、浜野範子先生にピアノを習っていたときのメソッドがこれでした。取り上げられている楽曲のレベル的に、中級以上(ソナチネ以上)のピアノレスナー向けなのですが、ピアノ好きで楽譜が読める人には全員勧めたい気分です。
実は岡田暁生さんが好きで、彼の本を探していて見つけました。彼の翻訳はとても見事です。しかもたまたまシャンドールのプロコフィエフ録音を聞いていたときに見つかるという偶然。いや必然?

 

シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現

シャンドール ピアノ教本―身体・音・表現

 

 

※私が書いたアマゾンレビューから抜粋。

カニズムのメソッド本ですが、機械的な練習法の提案ではなく(そんなものは時間の無駄だとバッサリ)*1、さまざまな作曲家の名曲難曲のフレーズをどのように捉えて演奏するか?ということを、膨大な楽曲を例に出して解説しているのが特徴です。特にフレージングや拍節感の捉え方が重視されています。これらは音楽的な演奏表現には不可欠ですが、アナリーゼの問題と見なされたりソルフェージュで学ぶこととされ、他のメソッドではごっそり欠落しているのが現状だと思います。つまりメカニズム*2ソルフェージュ*3・アナリーゼ*4・音楽表現といった要素が分断されているんですね。この本では【すべては音楽表現のため】ということで一貫するので分断せず、アナリーゼの結果が直接メカニズムに繋がるということが示されています。*5その結果「こういうフレーズはこういう動きで弾くといい」という書き方になっていてとてもわかりやすいのです。フレーズのアナリーゼは実はとてもシンプル。基本的に、強拍は強く弾け、弱拍は弱く弾け、です。以下引用。

強拍は重力を利用して弾け。でも安易に重力奏法とか言うなよ?腕の重みをたっぷり鍵盤に乗せるんだぜ、だから楽譜には下矢印↓を書くぜ。これだけで自然に深いフォルテになるし溜めもできるぜ一石二鳥以上だぜ。
逆に弱く弾くときは、魂を腕を重力に引かれちゃダメだぜ。腕や手首を引き上げるような動作で弾くといいぜ。キーシンがやってるアレだよアレ。見た目もカッコいいしさっさと真似しろ。当然、楽譜には上矢印↑を書くぜ。

その他のこととして、古典的なピアノ奏法の慣習にもメスを入れています。

強引な親指の潜行(指くぐり)はスムーズな動作を阻害して音楽的に弾けないから別のやり方に改善しろ。オレが写真で見本を示してやるわ。こういうフォームを習得するだけでスケールやアルペジョが速くスムーズに弾けるようになるはずだぜ。指の動きに頼らず、手首や腕といった多くの筋肉や関節に動作を分担させることで、無理なく楽に弾けるようになるぜ。

指くぐりの弊害については、浜野先生から言われた「そんなことやってたら速く弾けないよ?」で目が覚めました。つまり、親指で弾いた隣の鍵盤に別の指を滑り込ませる、あるいは別の指で弾いた鍵盤の隣に親指を滑り込ませるようにする。あとは、できるだけ負荷が小さく、滑り込ませやすいフォームを見つければいい。

また、フレーズの捉え方を習得していくと、無機質に書かれたように見えるオタマジャクシから生き生きとした音楽の本来の姿が見えるようになります。さらにそれを自分の演奏として表現できる喜びを感じることができます。最終的には、新しい曲に取り組むときに誰かに教えてもらうのではなく、練習曲に時間を費やすことも避けて、自分で考えて弾けることを目指していると思います。演奏家としての成熟を促しているのでしょう。でも一般人の観点からすると、ピアノを弾く人に喜びをもたらすメソッドですし、音楽がいっそう好きになるメソッドだと思います。

*1:ピアノはレパートリーが多いから、同じことばかり繰り返さず新しい曲を勉強しましょう、という話。

*2:機械的な動き

*3:フレーズの歌い方

*4:分析

*5:緻密なアナリーゼなくして技術なしということ。当たり前だけど忘れがちが視点。

今日のフォトムジーク(reface CS版)進捗の巻3

昨日は仮音でもいいや、くらいの気分で録音を進めていて、今週末までに半分くらい置き換えようと思っていましたが、1日経過して改めてヘッドフォンで聞いたところ*1けっこう良いと思いました。ということで、エフェクトの修正を中心に作業を行いました。

ただし、どうしても気になっていたコードバッキング音をゼロから作り直して録音しなおし。これはかなり似せられたのでリベンジ成功です。

個々の音色のエフェクトはそこそこ追い込みできました。
具体的には、dbxでコンプしたあとさらにDAWでコンプするとか(主メロ)、refaceでフランジャーをかけた音にDAWで追いコーラスするとか、リバーブ2回がけとか、多重エフェクト技です。こういうことをやると芯がぼやけたサウンドになるんですけど、それを狙ってます。昨日の段階ではかなり芯がはっきりした野太いサウンドになっていたので、全体的に輪郭をぼかしてなじませる作業ですね。

これで概ねいい感じになったので、試しにマスターにOzoneを挿して自動マスタリングしたところ、さらにコンプレッサーを効かせてくれて、かなり原曲に似た雰囲気になりました。予想以上に上手く行った感じ。いつものアコースティックピアノの演奏ではほとんどコンプを使わないんですが、エレクトリックな音楽はコンプ2度がけは基本ですね。サウンドの質感が全然違う。

本チャンのマスタリングでは、Ozoneに本物のフォトムジークのサウンドを学習させたAIマスタリングをやろうと思っています。これがOzone 8の売りなんですけど、うまくいくかしら?

*1:昨日はヘッドフォンを使わなかった

ヤマハ reface CS レビュー&使いこなしの巻

本格的に reface CS を使い始めたのでレビューを兼ねて機能紹介をします。

※まずはトリセツ(直リンク)

https://jp.yamaha.com/files/download/other_assets/5/438815/reface_ja_om_b0.pdf

12ページの波形/TEXTURE/MOD/LFOの関係表が超重要です。この部分が reface CS と他のシンセの大きな違いです。ディープなシンセオタクなら一読しただけで内容を理解できると思いますけど、詳しくない人はこのマニュアルを見ただけではチンプンカンプンだと思います。もうちょっとユーザーフレンドリーなマニュアルにできないものかとか小姑のような苦言が出てしまいますが、備忘録を兼ねてまとめておきます。

 

※OSCセクション

reface CS は2オシレータのアナログモデリングシンセですが、ユーザが波形を選択できるのはOSC1のみです。このOSC1で選択した波形によってOSC2とLFOの役割が自動的に変わり、その役割をTEXTURE/MODとLFOで設定するというのが基本的な流れになります。

  • ノコギリ波(マニュアルだと「マルチソー」)
    TEXTURE:サブオシレータ音量*1
    MOD:SUPER SAW効果量(マニュアル表記を意訳)*2
    LFO:OSC1のピッチ変調
  • パルス(矩形波
    TEXTURE:OSC2音程(半音刻みで1オクターブ上まで)
    MOD:パルス幅(Pulse Width)
    LFO:パルス幅変調=PWM(Pulse Width Moduration)*3
  • オシレータシンク
    TEXTURE:OSC2音程
    MOD:OSC2→OCS1変調量
    LFO:OSC2のピッチ変調量(お約束)
  • リングモジュレーション
    TEXTURE:OSC1ピッチ
    MOD:OSC2ピッチ
    LFO:OSC2ピッチ変調量
    ドレミは演奏できない程度に音程感のないベルが真骨頂。
  • フリケンシーモジュレーション(略してFM)
    TEXTURE:OSC2音程*4
    MOD:OSC2→OCS1変調量*5

LFOのASSIGN
LFOのASSIGN(変調先)はOSC/ピッチ/フィルター/アンプが設定できます。LFOの波形は固定でサイン波っぽいです。ちなみにDEPTH、SPEEDとも相当にエグい領域に踏み込んでいます*6

  • OSC(要注意)
    上記にまとめたように、OSCの波形によってLFOのデスティネーション(役割)が変化するので注意が必要です。LFOのASSIGNにOSCを選択するという操作は、ピッチを揺らすビブラートの設定をするのではなく、Prophet-5でいうところのポリモジュレーションをONすることになります*7。パラメータの接続が不可視な状態で勝手にポリモジュレーションされるので、最初のうちは混乱しました*8。ここに「LFOをビブラートだけには使わせないぜ!」という意識が見えます。
  • ピッチ
    普通のビブラートです。LFOをOSCやフィルターの変調に使っている場合は、ビブラートはエフェクター(コーラス・フランジャー)でなんとか代用可能です。
  • フィルター/アンプ
    こいつらは普通ですが、超高速LFOなのでリングモジュレーションみたいなこともできます。

※応用篇

  • ホワイトノイズ
    【OSC】FM/TEXTURE:最大/MOD:最大
    LFO】ASSIGN:OSC/DEPTH:最大/SPEED:最大
    LFOでOSCを変調しないといちおうドレミで演奏可能な音になります。reface CSのFMはDXとはニュアンスが違っていて、nord(初代)っぽいピーキーサウンドが出せます。この感じから、ちょっと古いバーチャルアナログという印象を抱く人もいるらしい。
  • 音色を濁らせる
    LFO】ASSIGN:FILTER/DEPTH:小~/SPEED:大~最大
    フィルターを高速でモジュレーションすると倍音に影響します。本当はOSC2やノイズでモジュレーションしたいところだけど代用としては十分かと思います。素の状態だとザラッとしたニュアンスになりますので、コーラスやフランジャーでなじませるとよいです*9

サウンドの印象など

  • 重厚長大サウンド
    太くて厚い音色と高い音圧が特徴のシンセで、ソロに使うには最高だと思います。ただし主張が激しいのでバッキング用途で使う場合は意識的に薄い音作りを志向する必要があります。
  • アタックが命
    ADSRのアタックが速く、しかも緻密に調整できるようになっています。音が出始めるニュアンスはとても重要なので、ここをしっかり意識した設計は高く評価できます。

*1:かなり太い音になる

*2:とってもゴージャス

*3:かなり強引にシミュレートしている。倍音成分そのものが大きく変わっておもしろい。

*4:マニュアルは誤り。あんまり問題ないけど。

*5:マニュアルは誤り。あんまり問題ないけど。

*6:とりあえず全上げしてみましょう。

*7:なのでデスティネーションというProphetの用語を使っています

*8:ちゃんとマニュアルを読みましょう。

*9:フランジャーとの相性がよく、ショワショワした音が作れる。