Symphony of the Aquarius よもやま話の巻

宇宙戦艦ヤマト 完結編(1983年)サントラのSymphony of the Aquariusを採譜し始めた件は前回書きましたが、今回はその作曲者であるハネケンこと羽田健太郎氏が関わった他の作品の話です。

Symphony of the Aquariusは、ヤマトシリーズの劇伴としては初の本格的なピアノ協奏曲スタイルの楽曲になっておりますが、実はハネケンはそれ以前に科学救助隊テクノボイジャーでピアノ協奏曲風の劇伴を書いています。サントラ盤には「地球荒廃」というタイトルで収録されています。

ANIMEX 1200シリーズ 70 科学救助隊 テクノボイジャー 音楽集

ANIMEX 1200シリーズ 70 科学救助隊 テクノボイジャー 音楽集

  • アーティスト:TVサントラ
  • 発売日: 2004/09/22
  • メディア: CD
 

テクノボイジャー石黒昇さんがスーパーバイザー的な立場で参加していたようで、彼の意向でシンフォニックな劇伴になったそうです。これは宇宙戦艦ヤマトの影響ではなく、「2001年宇宙の旅」など海外のSF映画の影響でしょう*1。そしてテクボイの仕事ぶりが評価されてマクロスへの抜擢が決まって、あとはみなさん御存知の通りの大活躍となります。

なお、ハネケンが独奏ピアノを担当したピアノ協奏曲としては弾厚作加山雄三)のピアノ協奏曲も有名ですが、この第1楽章はハネケンが書いたとしか思えないほどハネケン節全開です。全体としてはラフマニノフっぽいのですが、おそらく加山氏の好みでしょう。この楽章が作られたのが1975年だそうです。
ほかにも「さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅」のサントラで「再会」というピアノ協奏曲調の劇伴でもピアノを担当しています。この曲もピアノパートはハネケンにお任せのようですね。というか、スタジオにやって来てろくな譜面もなしで「チャチャッと弾いて」(本人談)このクオリティというところが、彼が引く手あまただった理由と思われます。

音大ピアノ科卒でクラシック一辺倒だった彼が、なぜこんな即興アレンジや演奏ができたのか謎だったのですが、70年代にコロムビアが出していたクラシックのイージーリスニングアルバムでさんざんアレンジをやらされたようで(なにしろ人材不足)、ピアノインストのアレンジなどお茶の子さいさいになったようです。しかし、アニメサントラでピアノインストがメインになった作品は少なく、存分に彼のピアノを堪能できるのは「夏への扉」(竹宮恵子原作)くらいしかありません。

ANIMEX 1200シリーズ95 夏への扉 音楽集

ANIMEX 1200シリーズ95 夏への扉 音楽集

 

そして竹宮恵子先生といえば風木(風と木の詩)です。実は「風と木の詩」のイメージアルバムにもピアノ協奏曲(!)が収録されています。その話はまた別の機会にしようと思いますが、わざわざ話題に出したということは採譜して演奏する気満々ということですw

 

おまけ:ハネケンが関わった名曲を演奏してみたシリーズ


竹宮恵子「夏への扉」メインテーマを弾いてみた 羽田健太郎作曲:楽譜つき

 


竹宮恵子「風と木の詩」イメージアルバムより セルジュのテーマを弾いてみた

風木のイメージアルバムでピアノを担当したのはたぶんハネケンです。楽曲もハネケンっぽさ全開で、「夏への扉」に通じる、爽やかでロマンティックなピアノインストです。作曲者としてクレジットされている横山菁児先生がハネケンに絶大な信頼を寄せていて、かなり仕事を手伝っていたということなので、実質的にハネケンの作品ではないかと思います。

*1:富野さんのイデオンほか、この世代のクリエイターは2001年の影響が大きい。

宇宙戦艦ヤマト完結編サントラ Symphony of the Aquarius の採譜を始めましたの巻

ツイッターをご覧になっているかたはご存知だと思いますけど、ヤマト完結編で羽田健太郎氏が作曲したピアノ協奏曲形式の劇伴 Symphony of the Aquarius の採譜をはじめました。

今日現在でカデンツァの手前まで採譜ができています。演奏時間的にはここまででちょうど半分ですけど、終盤は最初に出てくる第一主題の繰り返しなので実質的には7割くらい採譜は終わっています。

フルオケの耳コピかなり昔からやっていますが、MIDI楽器で再生する関係上16chに収まる範囲で楽器を取捨選択することが多く、きちんとフルスコアを書くようになったのは実は先月からです。MuseScore(記譜アプリ)のフルオーケストラテンプレートを発見したので、思い立って「ヤマトよ永遠に」の劇伴の「サーシャ(澪)に捧ぐ」の採譜をしてみたら、割とスムーズに採譜できしまったのでした。

この曲もピアノ協奏曲風の編成です。そしてこれが採譜できるのなら宿願の Symphony of the Aquarius の採譜もできるのではないかと思って挑戦した次第です。Symphony of the Aquarius はヤマト完結編の公開当時から大好きでいつか自分で演奏したいと思っていたのですが、採譜できなくて断念していたんですね。昨年、交響曲ヤマトの解説本を書いたときに、CDを聞きながら羽田氏のスコアをかなり詳細に分析して勉強したことが功を奏したようで、この半年くらいで一気にオーケストラの採譜ができるようになりました。

Nintendo Switch に当選したのでドラゴンクエスト11 S をはじめましたの巻

ヨドバシの抽選に当たったのです。

ソフトはマリオテニスドラゴンクエスト11 Sを買いました。
マリオテニスはまだ操作が慣れていなくてけっこう難しいです。ドラクエをプレイするのは8以来で久しぶりです。ゲームシステムがイマイチで、特にムービーからシームレスにボス戦になる仕様は不親切だと感じました。いったんセーブさせて欲しいところですが、ファミコン時代のボスも前口上から即座に戦闘に入っていたし、これがドラクエの作法だということを思い出しました。

あと特技を選択するパネルがFFXのスフィア盤のようだと思いました。しかしFFXは19年前のゲームなので、知らない人も多いでしょう。

ネルソンス&ボストン響のショスタコーヴィチ交響曲 5/8/9 番の巻

Shostakovich Under Stalin's Sh

Shostakovich Under Stalin's Sh

 

2000年代後半から2010年代前半はショスタコーヴィチにハマっていて、演奏会もかなり聞きましたが、最近はあまり聞いていませんでした。そんなわけで、これは久しぶりに購入したショスタコーヴィチのCDです。

2枚組でして、1枚めは9→5という順、2枚めは「ハムレット」の劇伴(抜粋)から8番です。
9番が非常に良くて、これを冒頭に持ってきたのは正解だと思いました。5番はもう少し重心が低いほうが好き。ただオケのアンサンブル能力がとても高くて、緊張感が緩むことがないのは素晴らしいです。ワルツのリズムがどこか硬直した感じで違和感を覚えたのは、わざとそういうふうに演奏したからだと思います。あとフィナーレの最後が遅くて、金管楽器の息が続かないかもしれないと危惧しましたが、なんとか持ちこたえたので妙な達成感がありました(笑)

なおShostakovich Under Stalin's Shadow というサブタイトルがついていますが、自分はスターリンの影は感じられない純音楽的な演奏だと思ったので、こういう余計な文言は不要だと思いました。 

フランク ヴァイオリン・ソナタ(ピアノ独奏版)の巻

NHKで放映している「らららクラシック」の好きなクラシック曲投票で、ヴァイオリン部門において不動の1位となっているのがフランクのヴァイオリン・ソナタです*1。フランクのソナタは自分も大好きで、デュメイ&ロルティのCDを愛聴しておりますが、今回はピアノ独奏編曲版です。編曲したのはアルフレッド・コルトーです。この編曲がとても素晴らしくて、原曲の良さを損なうことなく見事なピアノソナタになっています。幻想的な始まり方が素晴らしい第1楽章、激しく情熱的な第二楽章、ロマンティックな第三楽章、さらに神業としか思えないカノンが圧倒的な感動をもたらす第四楽章と、原曲の魅力をピアノ1台で余すところなく表現しつくしていて、まったく隙がないです。

ただ、この曲は原曲が非常に有名な割に、ピアノ独奏版はあまり知られていないようです。そうはいっても何人か録音しているので、いろいろ聴いてみたところ、「らららクラシック」やBSのクラシック番組でもおなじみ江口玲さんが演奏会で取り上げたときのライブ録音盤がベストではないかと思いました。

LIVE ! ソナタ集

LIVE ! ソナタ集

  • アーティスト:江口 玲
  • 発売日: 2009/07/01
  • メディア: CD
 

この編曲のよいところは、原曲のピアノのフレーズをなるべくそのまま残しているところです。よく知っている元の曲の印象から外れるところが一切ありません。でもそれゆえ第二楽章や第四楽章は極めて技巧的な編曲にならざるを得ず、非常に演奏困難です。江口さんの演奏はその困難さを全く感じさせませんし、楽曲全体を完全に把握しきっていることがよくわかります。また一流ヴァイオリニストと何度もこの曲を演奏していることもあって、一人で弾いているのに二人で演奏しているような雰囲気、つまりフレーズのやりとりや掛け合いにおける親密な息遣いまで感じられます。このため表現される音楽の密度が高く、それがこの演奏をとても感動的なものにしています。そして改めてしみじみと、いい曲だなよあ、と思うのです。こんなふうに弾いてもらったらコルトーも嬉しいのではないでしょうか。

自分もこの曲を弾いてみたいと思っていますが、あまりにも難しいのでコルトーが編曲した2台ピアノ版で我慢しようと考えています。といっても第四楽章の2声カノンは結局1人で弾くことになるのですが(笑)だいぶん難度が下がります。

なお下記にデュメイ&ロルティのCDのリンクを貼っておきます。 こちらも素晴らしい演奏です。

 

*1:チゴイネルワイゼンとかが入ってこないのが「ららら」の視聴者層の特徴

新・エヴァンゲリオン解説:第三回 新劇場版でわかっていることのまとめ

最近、当ブログで最もアクセス数が多いのがエヴァ関係のネタです。ただそのネタも旧エヴァ(1995年のTVシリーズと、その後の旧劇場版)が主体で、新劇場版3作品のことは公開時点の感想しか書いてきませんでした。新劇場版に関しては、いまさら謎解きをするのも面倒だったので放置してました。そんなわけで、謎解きを期待してこのブログに来た方は大変落胆したことと思います。

ですが、シン・エヴァンゲリオン劇場版の公開まであと1ヶ月になって(延期されてしまいましたが!)、予告編や新しいキービジュアルやキーワードが発表されて、先々のことがある程度予想できるようになったので、シンエヴァのこととか、周辺のことを書こうと思います。

ヱヴァンゲリヲン新劇場版の流れについて

現状で序破Qまで公開され、シン・エヴァンゲリオンも冒頭10分程度が公開済みです。序破Qはきれいに起・承・転という流れになっていますので、シンエヴァはちゃんと結末を迎えるのではないかと思います(期待を込めて)
起・承・転について書きますと、エヴァ序で「ここはこういう世界ですよ」という説明がシンジ(=視聴者)になされて、エヴァ破で「ほかにもこういうことがありますよ」と世界の成り立ちやキャラクターについて掘り下げた描写がなされますが、エヴァQでシンジ(視聴者)にとっては卓袱台返しを受ける、という構造です。この構造を踏まえて以下をお読みください。

新劇場版でわかっていること・わかっていないこと

・わかっている=劇中で明示されたこと
・なんとなくわかる=劇中の情報から推測できること
・わからない=上記以外の謎
ということでまとめていきます。

1.サブタイトルの件 <わかっている
・当初のサブタイは Rebuild(再構築)という言葉が入っていた
序破急+?に変わり、さらに序破Q+シンエヴァになった
・Qまでの英語副題は (not) つきで二面性を表現している
新劇場版の世界は、旧エヴァ後に再構築(Rebuild)された世界ではないか?という考察があちこちでなされています。
そもそもヱヴァ新劇場版は当初 Rebuild of Evangelion という英語のサブタイトルが付いていて、エヴァという作品を再構築することだと説明されていました。その上で、物語に登場する世界も再構築されているとすると、きれいにダブルミーニングになります。でもあまりにもネタバレですし、衒学的なことはもうやらないという方針があったようで、日本語表題はヱヴァンゲリヲン新劇場版序破急+?となり、英語副題としてまず第一部は You are (not) alone. という形に落ち着きました。みなさんもおわかりのように、英語の副題が作品ごとのサブテーマを示し、(not) をつけることでエヴァという物語が内包する二面性を表しています。

2.赤い海の件 <わかっている
・旧作と違って、新劇場版の海は赤い
・海洋生態系保存研究機構は赤い海を青く戻す研究をしている
エヴァ序のファーストカットは旧エヴァ劇場版「まごころを、君に」のラストシーンを想起させる赤い海でした。ただ、エヴァ序は先に述べたように起承転結の起なので、新劇場版の海は赤いということが視覚情報で示されるだけです。
エヴァ破では、国際環境機関法人 日本海洋生態系保存研究機構(略して海洋研)という加地さんと関わりがあるらしい組織赤い海以前の環境を保存し、赤い海を復元する研究をやっていて、赤い海を元の青い海に戻せる可能性があることが示唆されます。さらに、月のネルフ基地を視察したゲンドウと冬月が宇宙空間から地球を見て、赤い海がセカンドインパクトの結果生まれたことが示唆されます。
赤い文字で書いたところは非常に重要です。先行公開されたシン・エヴァンゲリオン劇場版:||のアバン1において、コア化して一面真っ赤になったパリをヴィレのメンバーたちが元の状態に復元していますが、あれこそが海洋研の研究成果だと思われます。14年前には隔絶した空間しか復元できなかったのに、かなり広い範囲でも適用できるほど実用化されたことがわかります。

3.海洋研とヴィレの件 <たぶんわかる
海洋研は新劇場版で新しく登場した組織で、エヴァ破の時点では(表向きは)生態系の保存と環境復元の研究をやっています。これはゼーレとゲンドウが進めようとする人類補完計画の針を巻き戻す行為であり、かなり明確に反ゼーレ・反ネルフという目的があったと思われます。このことより、海洋研はエヴァQで登場したヴィレの前身の組織であると推測できます。
問題は、この海洋研を誰が創始して運営しているのか?という話です。ミサトはエヴァ破の時点で海洋研のことは知っていて、その上でシンジたちと施設訪問には帯同しませんでしたので、海洋研と関係は深くないと思われます。しかしエヴァQではヴンダーの艦長をやっていますので、ヴィレ内の立場はかなり上になっています。ただし艦長は雇われ人ですから、雇った人がいるのです。そのきっかけを作ったのは加持リョウジでしょう。ということで加地さんの役割が非常に重要になってきます。
なお、エヴァQの予告で「幽閉されるネルフ関係者たち」というセリフがありますがそこにかぶさる絵の海が青く復元されているので、海洋研つまりヴィレに幽閉されたと考えるのが自然です。(ここぞとばかりエヴァフォントを使う私)

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なお、この幽閉のおかげでネルフ関係者はサードインパクトから難を逃れるできたと考えられます。なので幽閉というよりは隔離といったほうが適切かもしれません。

4.加地&マリの件 <わからない
加地リョウジと真希波・マリ・イラストリアスは、ゼーレとネルフ(ゲンドウ)の両方の目的を把握して行動しているフシがありますので、エヴァ新劇場版における重要なキーパーソンです。
まず加地さんの件。エヴァ破 2.22(Blu-ray・DVD版)において、加持さんが第3新東京市にやってきてシンジたちと遭遇する場面がわざわざ追加されています。このシーンは、エヴァ破という作品の中ではマリとシンジの邂逅と対になるものとして追加されたのではないかと推測します。新劇場版全体の中ではシンジに対して大きな影響を与える人の登場を描いたシーンと位置づけることができます。ミサトやマリはシンジと印象的な出会いをしますので、加持にも同様の場面を付け加えることで、映画としての完成度を高める狙いがあったと推測します。また先に述べたネルフ関係者の幽閉に、エヴァ破の冒頭で加持が言っていた「大人の都合」の中身が見えていると感じます。加持は反ネルフなのですが、使徒は殲滅しておかないと困るのでそれまではゲンドウに従っているのです。そしてサードインパクトが起きる前に、ゲンドウと冬月以外のネルフ関係者を連れて逃げ出したと考えられます。だからエヴァQの世界でも加地は生存しているものと思われます。
一方のマリは、名前が狂言回しであるデウス・エクス・マキナのようでもあり、実際それっぽいセリフが多いものの、いろいろ匂わせているだけで正体はさっぱりわかりません。貞元氏による漫画版でマリはユイと面識があることが描かれていて、エヴァQでも綾波のオリジナルを知っている旨の発言がありますので、ユイやゲンドウたちと同じ時代を生きていた可能性は高いでしょう。ということは、セカンドインパクトも知っているはずですし、加持と同等の立場にいても不思議ではないということになります。

5.白線の巨人の件 <わからない
エヴァ序に登場する伏線くささしかない白線で描かれた巨人。あれはネルフの地下にいるリリスと考えるのが妥当ではないかと思いますが、そもそもリリスは本当にリリスなのか?という問題があります。

6.リリスの件 <わからない
というわけでリリスについて。エヴァ序において、ミサトがセントラルドグマで磔にされている足なし巨人がリリスだと早々にネタバレして観客の度肝を抜きました。しかし、あの仮面は使徒の顔ですよね。ということはリリスではなくアダムかもしれません。ミサトさんたちや、自分たち視聴者は、旧作に続いて新劇場版でも騙されているのかもしれません。とりあえずリリスかアダムか現時点ではわからないので、ドグマの巨人と呼称します。巨人はエヴァQにおいて綾波の顔をしていることから、綾波と共通の因子を持っていることは確実であると思われます。その結果、綾波の正体もリリスなのかアダムなのかわからないということになります。

7.エヴァ初号機の件 <たぶんわかる
エヴァ序において、第6の使徒(旧作のラミエル)でシンジがエヴァ搭乗を拒否した際に、ゲンドウが「ダメなときはレイを使うまでだ」と綾波を初号機に乗せることを言い出します。そのときに冬月が「あまりにも危険ではないか」と忠告します。この場面で、エヴァ初号機綾波の相性が旧作とは全く変化していることがわかりますし、新劇場版のエヴァ初号機は旧作とは異なり、ドグマの巨人をコピーして作ったものではない可能性が高いことも示されました。
なぜ危険なのかいろいろ考察している人もいますが、現時点では明確に示されていないのでわかりません。初号機の中に碇ユイがいることはエヴァQで開示された確定事項なので、ユイのクローンであるレイが搭乗しても問題ないと思うのです。ただ、初号機が持つ因子と綾波が持つ因子が、アダムとリリスのように対立するものであるとしたら、危険と言えるでしょう。おそらくその可能性が高いです。
しかしゲンドウはユイを絶対的に信頼しているので、対立因子を持つ綾波が初号機に乗っても大丈夫だと思っているのでしょう。

6.Mark 6の件 <わからない
エヴァ序において、旧作のリリスのお面を付けた状態で建造されていたエヴァンゲリオンMark 6は、エヴァ破のエンドパートで天使の輪のような光輪つきで登場しました。
仮面を付けていたので、アダムもしくはリリスが素体になっているとエヴァ序の当時は考えられていました。なぜ月に存在していたのかはわかりません。エヴァQにおいてはアダムスの器という呼称も登場しました。

7.アダムスの器 <たぶんわかる
アダムスはエヴァ破のセカンドインパクト回想シーンで登場した4体のADAMSのことと思われます。器という言葉はあまり深く考えず「木の器」「ガラスの器」などと同じで、ADAMSを原材料として作られたモノと考えるとスッキリします。アダムスの器は何らかのきっかけで光輪を持つことができる=シン化できることも示されています。新劇場版のアダムスの器として確認されているのは、いまのところ下記の3体のエヴァです。
・Mark 6
・Mark 9
・第13号機
器=入れ物ということになりますが、入れるものはもちろん「魂」です。エヴァQでリリスの結界を破るには2つの魂が必要ということで、ダブルエントリー式のエヴァ第13号機が用いられたのでした。

8.アダムスの器の役割 <わかっている
問題はこれらアダムスの器がなんのために作られたか?ということです。エヴァ2号機は兵器として作られたことが明白ですが、アダムスの器たちは兵器としての機能はオマケで、中に入った魂との相乗効果でシン化することによりインパクトを起こすこと、つまり神(アダム・リリス)によらず、人為的にインパクトを起こすことが目的です。そのシン化を起こすときに光輪ができますが、魂が2つ存在すると光輪も二重になります。

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ちなみにヴンダーは綾波を取り込んだ初号機を主機として使っていて、なにかあると光輪を発生します。ヴンダーはエントリープラグがあることからわかるようにエヴァと同等の存在であり、アダムスの器である可能性すらあります(神殺しなどという別名を持っているくらいですからね)。なおヴンダーの光輪が2重であることより、ヴンダーの中の初号機にはユイと綾波(ポカ波)の魂が存在していると推測されます。

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初号機にはシンジ君とは別の魂が入ってしまったので、シンジくんはもうシンクロすることはできません。

9.インパクトについて <たぶんわかる
インパクトは行き詰まった人類の強制進化であり、人類の魂の補完が目的(カヲルやゼーレの談話より)だそうです。なんのために進化や補完するの?というところがわかりませんが、まあそういうことです。人類補完の扉を開くネブカドネザルの鍵にしても、ゲンドウはユイに会うために使うのです。いずれにしてもインパクトは手段にすぎないと言えます。

10.渚カヲルたぶんわかる
カヲル君は新劇場版でもわけのわからないことを喋っている風を装って核心に迫る発言をしていますが、その中の最大の問題発言と見ているのがこれです。
第1使徒のぼくが13番目に堕とされるとは」
新劇場版のナンバリングなら第1使徒という言い方になるはずなのに、旧作と同様に第1使徒と口にしています。この言葉でカヲル君の魂は旧作から継続していると推測されます。カヲルくんは月の棺の中にスペアが何体も存在しているらしいことはエヴァ序で示されていますので、インパクトを超越して何度でも蘇ることができると推測されます。
なおエヴァQで13番目になった理由は、Qの前に起きたサードインパクト以前に殲滅されたはずの第12の使徒が生きていたからでしょう。

 

シン・エヴァンゲリオン劇場版:|| について

シンエヴァの予告でカヲル君が出てきてますが、これは月の棺桶からやってきた何人目かのカヲルの可能性もあります。なんやかんやでファイナル・インパクトが起きるものの、おそらくゲンドウとシンジの両者が折り合いをつけた形になる思います。
リピート記号に従ってもう一度やり直すとか、コスモリバースよろしく世界がもとに戻るというドラマはどうでもよくて、父と子が折り合いをつけることが大事です。なぜなら、新劇場版は碇シンジの物語だからです。
また、テレビ版は最後に「父にさようなら 母にありがとう」と告げてシンジが両親から自立して終わるという、一種の大団円になっているのですが、旧劇場版は「気持ち悪い」で終わりでしたからね。いや確かに「まごころを、君に」のシンちゃんは相当に気持ち悪かったけど、そこで終わることないんじゃない?って思いますよね。
このブログは音楽ブログでもあるので音楽のことも書いておくと、予告編があと2つほど作られて、その1つに弦楽四重奏版の次回予告の曲が用いられると思います。この曲は鷺巣さんがツイッターで録音したことを報告しています。さらに、数年前から公式が残酷な天使のテーゼを推しまくってるので、どこかで流れるかもしれません。またエンディングもしくクライマックスに緒方恵美さんの歌が使われる可能性が高く、そうなると選曲は Fly me to the moon しかないよなあと思ってますが、エヴァ破では綾波に「翼をください」を歌わせているので別の曲の可能性も否定できませんね。

おまけ

ざっくりと新劇場版:序破Q+シンエヴァをまとめてしまいましたが、最後にシンエヴァ後の展開について考えます。
シン・エヴァンゲリオンは「さらばすべてのエヴァンゲリオン」と銘打たれていることから、宇宙戦艦ヤマトシリーズのように続編やスピンオフが作られることを想定していると考えられます。もっとも、庵野氏がその監督を引き受ける可能性は低いでしょう。

ブレハッチ ショパン前奏曲集/中井正子 ラヴェル ピアノ曲全集の巻

ショパン前奏曲ブレハッチ

Complete Preludes

Complete Preludes

 

op.28の前奏曲集と、op.45の前奏曲、遺作である変イ長調前奏曲、それからノクターンop.62を収録。
いずれも派手さはないものの、ブレハッチらしく折り目正しい演奏解釈で演奏されいます。同じようなフレーズを繰り返すときに、2度めを極端にピアニッシモで弾くのが気になります。表現したいことがあってやっているとは思いますが、ウナコルダも踏むため主張が引っ込んでしまうような印象を受けます。また弱音の音色がいまひとつ伸びてきません。実演では音色表現はとても素晴らしかったので、ピアノの調整か録音の状況が影響していると思います。
ただ、この人の最大の良さだと思っているピアノの鳴りをコントロールする手腕は相変わらず冴えています。全体的にペダルが控えめで清冽な音響を保ちつつも、貧相な響きにならないという絶妙なバランスが聞き所です。これが最大限に生かされるのがop.45とop.62で、前奏曲集op.28がほんとうにプレリュードとしての機能を果たしているように思いました。


ラヴェル ピアノ曲全集 中井正子

ラヴェル ピアノ作品全集

ラヴェル ピアノ作品全集

  • アーティスト:中井正子
  • 発売日: 2012/06/07
  • メディア: CD
 

中井さんはショパンの協奏曲の実演を聞いたことがあるんですけど、あの難曲をいともたやすく、颯爽と弾ききってしまうのでびっくりしました。あれほどのテクニックと音楽性があるならラヴェルの演奏も期待できると思って購入して、期待以上だったCDです。

まず極めて緻密な演奏設計がなされており、楽曲の見通しがよさが際立っています。メヌエットやワルツなど三拍子の扱いに若干の硬さを感じさせることもありますが、舞曲性をあえて強調していないようにも思えるので、これが中井さんの表現なのだと感じました。
どの曲も確実に打鍵をコントロールして、しっかりとした演奏表現ができる前提のテンポで弾かれているのも特徴です。そのため表現が濃密で情報量が多く、それゆえテンポが遅く感じることもありますが、実際はそれほど遅くなかったりします。とにかくラヴェルの意図を伝えようという意識が高いようで、鳥の声や波のうねり、鐘の音などを象徴的に聞かせるのが抜群にうまいです。もちろん、何を象徴しているのか?という解釈は、聞き手に委ねられます。鏡や「高雅で感傷的なワルツ」、「クープランの墓」といった組曲と、単発の性格的小品における表現の密度が変わらないのも優れていますね。日本人のラヴェル録音の中では群を抜く出来栄えだと思いました。