崖の上のポニョの巻

見てきました。ストーリー=×、音楽=×、演出=上々、映像=上々、というところです。お金を払ってみるのが腹立たしいような話なのですが、なにしろ映像のイマジネーションは相変わらず凄くて、大画面で見てよかった〜と思えるシーンがいっぱいなので評価が甘くなります。

ストーリー

ネタバレになるので書かないけど、どっかのおとぎ話と同じです*1。オトナ的視点だと果てしなくつまんないですが、子供向けと考えると怒りが収まります。

音楽

製作中のドキュメント番組で駿が*2妙なクラシックをBGMにガンガン流しながら絵を描いていたのでイヤな予感はしていたのですが、それが的中。とにかく、全編うるさくて邪魔な音楽の垂れ流し状態。こんな音楽の使い方を許したのは誰ですかいったい。あとクラシックへのオマージュが多すぎです。あそこまでワーグナーラヴェルドビュッシーの模倣をするくらいなら、彼らのオリジナル曲を使えばよかったのに。*3

演出

しつこさやクドさを感じさせずに、ナチュラルにロリ全開というのがすごい。この点は絶賛です。駿の趣味全開演出ということでは紅の豚と対で語るものだと思います。紅の豚でだいぶ格好をつけてロリ趣味を演出していたけど、幼女と絡みたい→自分も子供になっちゃえばいい、という超絶論理を用いた段階でこの映画は勝った感じです。あと説明ゼリフや説明シーンを極力カットしたのも正解です。そんなもんはイラン。*4あと、五歳児が主役ということで基本的な視点が五歳児で世界がすごく狭いのもいい感じ。細かいところでは、両親の呼称が名前だったりするところに微妙に違和感を抱きます*5。それと、演出面でも過去作品のオマージュが頻出するのは賛否両論あるかも。

映像

やりやがった。新境地。そうかこういう方向性か、という。色彩設計はちょっとわかりやすすぎたかもしれないが*6、あれだけの色数を使ってゴチャゴチャにならないのは本当に凄い*7。映像で説明するのをやめて、見ている人のイマジネーションに任せるなら、こういうやりかたがいいでしょう。

その他

ハッピーエンドですので、安心して見れます。開始30分くらいで以下のようなことを考えてました。ネタ元になったおとぎ話と同じように、最後をアンハッピーエンドにしたら立派な文学だなあ。最後にポニョが死んだり消えて無くなると、哀しくも美しい想い出として結晶化するし、映画としてはそっち方向に舵を切るのが正解だし、そうしたら絶対に名作なんだけど、でもそんな悲しい話は絶対にイヤだ!なんでだかわからないけど、この映画はハッピーエンドじゃなきゃヤダヤダ!(ジタバタ)……(時間経過)…駿、君はどこまでもロリなんだね。

結論

子供が親と一緒に「うわ〜すご〜いね〜。あのおさかななんだろう?あの光はなんだろう?→ああじゃないかな?こうじゃないかな?」って、ワイワイしながら見るのが基本です。なにしろまともな説明はないし、ストーリーは単純なので*8。「想像力のない人が見ると絵が綺麗なだけのつまらない映画」という点ではハウル以上に徹底していて、この映画をどう見るかでその人の右脳系イメージ力とでもいうものが如実に明らかになってしまうと思います。ファンタジー好きにはたまんないかも。

*1:ラストがちょっと違う。

*2:いきなり呼び捨て

*3:でもそれだとエヴァになっちゃうのです。庵野の猿真似をするのは駿のプライドが許しません。←そんなプライドは捨ててしまえっ!

*4:1から10まで説明してほしい想像力に欠ける観客には辛いです。

*5:主人公の両親の微妙な関係の描き方が上手いです

*6:ほのぼのシーンは暖色系、スペクタクルシーンは暗&寒色系

*7:これはハウルでも感じました。色数の多さが近年の駿の映像の特徴。

*8:五歳児でも理解できるのが前提