モーツァルト ピアノ協奏曲第20番の巻

例の内田光子@ベルリンフィル・ジルベスターコンサート(2006年12月)が再放送されて、やっぱりいいと思ったので練習開始です。難易度的にはツェルニー40番くらいで、すごく難しいとかそういうわけでもないです。ただやはりピアノ協奏曲なので、弾きやすさを考慮していないパッセージが多いです。純粋に音楽的な必要性から音符を書くのが基本のようで、オクターブ超のアルペジョなどピアノソナタではほとんど出てこない技巧が満載で、弾き応えがあります。
それで、Petersの原典版で弾いてるんですが、この楽譜が最悪。クリスティアン・ツァハリスのつけたと思われる運指が目ざわりで譜読みに支障を来たしています。なんじゃこりゃ、という指つかいがあちこちに多発です。ご覧のように自明と思われる単純な音階にも指番号が付いていて、しかもパッセージの終わりが1454って何ソレ。この直後に低音部へ移行するので最後の音を4の指で弾くのはいいのですが、1454は最も弾きにくい運指です。ここは普通は1343でしょう。*1このほか、ゆっくりした4分音符にまでわざわざ指番号が振ってあって、違和感バリバリです。確かにパッセージの入り方やアーティキュレーションを考慮すると「こういう運指になるよね」ということは理解できるのですが、解説がなくいきなり指番号の羅列になるのは困ります。
あとこの楽譜の問題点としては、モーツァルトの指示なのか校訂者の加筆なのかわかんない通奏低音がゴチャゴチャ書かれているとか*2、スラーやスタカートなどのアーティキュレーション記号が曖昧とか、強弱記号が全然付いてないとか、演奏者の裁量に任される部分が多いのがポイントです。モーツァルトではいつも問題になると思いますが、スタカートが・(丸点)なのか’(縦長の点)なのか、自筆譜を見ても判別つきにくかったりしますけど、これが奏法や解釈に影響するので困ります。最終的には、オーケストラ譜を見て判断しないとどうしようもないという感じです。2台ピアノ用に書かれた楽譜はオケパートが省略されまくりですので、きちんとスコアを見て、木管や弦の対旋律がどういうアーティキュレーションで書かれているのかによって、ピアノの弾き方を決めていくしかありません。
あ〜、それにしても、楽譜探しが憂鬱です。*3内田さんの演奏を聴くと、オケとの対話を重視した結果このアーティキュレーションになりましたというフレーズが非常に多く、参考になります。例えば、第二楽章中間部の手が交差するパッセージは、高音部はレガートで弾き、低音部はスタカートにするなど、ピアノパート中には書かれていないアーティキュレーションなのです。オケのパートに合わせた弾き方をすると、自然とああいう風になります。

*1:どうもツァハリスは3の指を特別なものと考えているらしい。

*2:現代ピアノ+オケの演奏では、独奏パートの通奏低音は全部無視するのが一般的。

*3:モーツァルト全集って確かPDFで公開されていたような。