<要旨>
作曲家が使っていた楽器を意識して座る位置を変えると弾きやすくなる。
上記の画像はベートーヴェンが使っていたピアノの音域の変遷です。
ベートーヴェンは売れっ子作曲家兼ピアニストだった上に新しもの好きだったので、楽器メーカーから試作品を供与されていたそうです。その際、おそらく音域やタッチに関しても注文を付けていたと思われます。(1980年代に坂本龍一さんがヤマハと一緒にMIDIグランドピアノを開発したことを思い出させます)
この表で重要なのが最も古いシュタインです。F1~f3(大文字表記だとF6)の5オクターブです。この音域だといわゆる中央ドと呼ばれるc1(大文字表記だとC3)がちょうど中間点になります。まさに中央ドなんです。ベートーヴェンはこのピアノを中期に入っても使い続けています。ベートーヴェンがエラールを弾きだして音域が広がるのはワルトシュタインからです。
というわけで、
ベートーヴェンの、ワルトシュタインより前のピアノソナタを弾くときは、おへその位置が中央ドの前にくる位置に座ったほうが弾きやすいはず
という仮説が成り立ちます。
そして実際、ちょっと左寄りに座ると弾きやすいんです。そんなお話でした。
<他の作曲家について>
チェンバロは通常4オクターブです。音域は中央ドの両側に2オクターブになりますので、やはり現代のピアノで演奏する場合は少し左に寄って座ったほうが弾きやすいです。
余談ですけど、現代の5オクターブ(61鍵)のキーボードやシンセはC2~C7と相場が決まっていますが、ベートーヴェンの時代と同じくF1~F6にしてほしいです。音域を下げてF開始にするだけで5オクターブ鍵盤で演奏できるレパートリーが格段に増えます。C2~C7だとバッハは弾けますが、古典派の曲にはもう対応できません。足踏みオルガンがC2~C6の4オクターブなのでその上に1オクターブ付け足せばいいという考えでC2~C7の製品が作られたと想像しますが、あまりにも非音楽的な発想だと思います。