ここがいいよ&ダメだよIvory II American Dレビューの巻

Ivory II American Dを使い始めてけっこう経ちました。おおむね好きといえる音源ですが欠点も見えてきたのでまとめてレビューします。これから購入する人の参考になればと思います。

 

1.いいところ

  • 音像が大きい上に低音域がよく伸びているので、クラシック音楽的な(ドイツ・グラモフォンレーベルのような)雄大なピアノサウンドが容易に得られる。
  • ベロシティレイヤーが多く、ピアニッシモからフォルティッシモまでの表現力が高い。
  • 音色調節の幅が広く、かなり実用的に使える。
  • サスティンペダルを踏んだときの共鳴シミュレーションの塩梅がよい。Pianoteqのようなレベルではシミュレーションできていないけれど、適度な共鳴感で響きが濁りにくい。
  • フルコンサートピアノを弾く気持ちよさを味わえる。
  • ベロシティ感度の設定機能が優れていて、自分に合ったベロシティカーブを作れる。

クラシック音楽っぽいピアノサウンド」というのは、D274というピアノの良さを損なうことなく再現できているということです。低音部の太い響きときらびやかな高音部が絶妙に共存していること、D274の名前の通り全長274cmの大きな楽器で響板という面から音が出てくるので、その音像の大きさをステレオサンプリングで再現できています。

しかし、この特徴はそのままダメなところというか、使いにくさに直結していくので注意が必要です。クラシック系の曲をソロで弾くならおすすめできる音源です*1
ベロシティ感度設定もよくできていて、いろいろなキーボードに対応できると思います。VIENNA SYNCHRON PIANOはベロシティ設定が壊滅的にダメなので、リアルタイム演奏派には厳しいです。HANS ZIMMER PIANOもベロシティ設定の使い勝手が極めて悪いです。この2つに関しては改めてレビューする予定ですが、HANS ZIMMER PIANOはともかくSYNCHRON PIANOはサウンドも含め過大評価だと感じます。

 

2.ダメなところ

  • 残響感が少ないステレオサンプリング。
  • ステレオ幅を狭めると音が痩せる。デフォルトでStereo Width(ステレオ幅)が狭くなっているプリセットは位相の問題で音が悪いので、必ず100%に広げて使う必要がある。
  • つまり、モノラルで使うことができない。
  • ステレオ幅100%でしか使えないとなると、アコースティック系(アンプラグド系)で、なおかつピアノが主体となる曲以外には極めて使いにくい音源といえる。

たぶん無響室でステレオサンプリングしていると思うんですが、残響感がないのでエフェクト(リバーブ)が必要です。Ivory II付属のリバーブはパラメータを細かく調整できないので、こだわりたい人は別途ご用意くださいということになります。自分はリバーブプラグインを持っているので特に問題はありません。
それより問題は位相です。楽器の音像が大きいとポップスやロックでは使いにくいのでStereo Width(ステレオ幅)のパラメータを調節して左右を狭めてみたのですが、音の伸びがなくなって、楽器の音色自体が変化してしまいました。位相の問題で、波形が変化したためと思われます。

ちなみにこの手の位相の問題はIvory IIのようなサンプリング音源に限らず、ステレオ出力のシンセサイザー音源でも起きます。なんでもかんでもステレオにすればいいというわけではございません。

 

3.対策

  • 総合音源やハード音源のピアノを使う
    こういう音源に収録されているピアノはクラシック系のソロに使うのは厳しいですが、ロックやポップスには非常によくマッチします。特に近年の日本製のハード音源(シンセ含む)のピアノはバンドで使う前提でサウンドメイクされているのでとても良いと思います。
  • 多マイク収録の音源を使う
    Ivory IIのアンチテーゼのようなコンセプトで、多マイク収録のピアノ音源がいろいろ発売されております。マイクが増える分だけ容量は大きくなりますが、こだわる人は導入していますね。
  • 音像が小さい楽器からサンプリングした音源を選択する
    ヤマハC7や、スタインウエイBなど、フルコンサートピアノよりひとまわり小さいサイズのピアノをサンプリングした音源が出ています。
  • バーチャル系音源を使う
    ポップスやロックで評判がいいのはやっぱりローランドのSNピアノです。クラシック向きではないけれども、アンサンブルで生かせるサウンドです。クラシック向きなのはPianoteqかなと思ってます。

 

 4.雑感

こういう欠点までレビューしている人が少なくて、ちゃんと使わないで適当に記事を書いているいるDTMブロガーが多いのではないかと思いました。モノラルにできないことや位相の問題は、この音源を使ってなにか制作すればすぐ気づくと思います。
まどか☆マギカだか何かのアニメ劇伴でこの音源を使った人がいて*2、ソロに限定していたという話で、どうしてそんなことになるのかな?と不思議だったのですが、自分で使ってみてソロ以外で使うのが困難ということを実感しました。

 

5.自前の演奏で解説

www.youtube.com

マイクポジション= Audience、Stereo Width = 100 です。
Audienceといってもマイクの位置はかなりピアノに近いと思われます。その証拠に、高音域ほど明瞭にセンター定位しますが、音域が低くなるに従って音像が遠くなり、同時に左右の広がり感が大きくなります。

このサウンドはスピーカーで聞くとかなり気持ち良いのですが、ヘッドフォンだと違和感があります。また良くも悪くも低域に締まりがないのでポップスやロックで使おうとすると、左手の使い方に制約が生じます。

*1:でもそういう人ってDTMerでは少数派ではないでしょうか

*2:詳細失念w