Ivory II American Dをかなり安く買えたので、もう少し新しいところの音源はないかと吟味しています。アコースティックピアノはDTM音源としてはかなり競争が激しいジャンルなので、5万円弱でソロでの演奏でも耐えられるクオリティの音源があります。
- Vienna Instruments Synchron Piano
https://www.vsl.co.at/en/Synchron_Package/Synchron_Pianos_Bundle
5種類のピアノがあります。1種類当たり200GBくらい。強弱は70段階とのこと。音色は素晴らしいのですが、共鳴シミュレーションが全くされていないので、一昔前の電子ピアノのようなサウンドになっているのが惜しいと思います。2012年発売のIvory IIですら共鳴をシミュレーションしているのに。
- East West Quantum Leap Pianos
https://h-resolution.com/product/quantum-leap-pianos/
こちらはベヒシュタイン、スタインウエイ、ベーゼンドルファー、ヤマハ(C7)の4種類のピアノがでセットで250GBくらいなので1つあたりの容量はIvory IIと同じくらいですからよく頑張っていると思います。ヤマハ以外はフルコンです。Platinumエディションで5万弱です。 - Spitfire Audio Hans Zimmer Piano
本命です。ピアノ1種類(スタインウエイ)で220GBで、広いスタジオのいろいろな位置に設置したマイクでサンプリングした複数の波形を混ぜてサウンドを作ります。そのためサウンドの空気感や、アンビエンスに抜群のリアリティがあります。デモ演奏でも十分そのサウンドの雰囲気が伝わってきます。
Spitfire Playthrough - Hans Zimmer Piano: Ben Onono performs Rachmaninoff Op23 No 7
マルチコアCPUに対応する重い音源であり、今となっては小型軽量で使い勝手のよいIvory IIと比較して「テスラからブガッティに乗り換えるようなもの」そして「(2台とも乗りたいなら)広いガレージが必要」という評がうまいと思いました。(下記リンク参照)
https://sonicwire.com/news/blog/2016/05/keyboard-hans-zimmer-piano-spitfire-audio.html
この評は4年前に書かれたものですが、ガレージ(SSD)も当時主流だった128GB~256GBから500GB以上が主流になりましたので、容量は大した問題ではなくなったと言えるでしょう。
この音源で面白いのは、弦を手でこすったり撫でたりした音や、筐体を叩いた音など、ピアノを所有している人ならやったことがあるだろう遊びのサウンドが入っていることです。当然のごとくプリペアド・ピアノも入っていて、もちろんどれもマルチマイク収録です。 - Produstion Voices Concert Grand
ニューヨークスタインウエイDの音源で総容量1.1TBとモンスター級です。なぜそんなことになるかというと、16bit 44.1kHz/24bit 44.1kHz/24bit 96kHzという3種類のサンプリングレートを用意しているからでして、16bit版の容量は200GBということです。この製品もマルチマイク収録ですが、Hans Zimmer Pianoよりずっと小さなスタジオで収録されているのでドライなサウンドが特徴です。高品位になったAmerican Dという感じなので、Ivoryに慣れている人はこちらのほうが使いやすいのではないかという気がします。
YouTubeにいろいろ動画が上がっていて、グラフィカルに細かくエディットできるのが非常にわかりやすいと思います。下記の動画はアンビエンスの調整ですが、びっくりするくらい空間表現が変化します。
※まとめ
Synchron Pianoはあまりにも音が良いため、ペダルを踏んだときの共鳴がない現象に違和感を覚えます。それ以外は欠点がないです。
East West QL Pianoは残念ながらろくなデモが見つからないのですが、サスティン部に厚みがある音色で、このメーカーの特徴であるサントラ音楽向きの壮大感は出しやすいと感じます。
Hans Zimmer Pianoはおそらく処理速度がボトルネックで、ソロ演奏でしか使えない可能性があります。
Produstion VoicesのConcert Grandは情報が少なくて、特に日本では知られていないようですがとても良いと思います。
現在自分が使っているメインのピアノ音源はINTEGRA-7のSNアコースティックのピアノと、MONTAGE 8のCFXです。どちらも一長一短があり、曲によって使い分けてきましたが、最近はMONTAGEのCFXが増えています。MONTAGE CFXの欠点は、フォルティッシモの限界が低くて最大パワーで弾いてもあと一歩弱いところと、階段状に音色が変化するポイントがあることです。これをクリアするには物理モデル音源もしくは強弱の段階数が多い音源を使うしかありません。先日購入したIvory II American Dが20段階で、なんとかクリアしている感じです。